日機装の文化
2022/07/26
【#医療機器開発者インタビュー】Vol.1_よりよい医療を実現し、家族や友人が暮らしやすい国に
- インタビュー
- 技術開発
- 血液透析
- メディカル事業
目次
1969年 国産第一号となる人工透析装置の開発に成功して以来、およそ50年にわたり透析医療の発展と共に歩んできた日機装。その歴史の中で培った技術ノウハウを活かし、現在は透析医療のほかに救急医療、外科領域などの新分野においても “患者さまにとって快適な医療環境” を目指す取り組みを続けています。
Brightでは、そんな日機装のメディカル事業において活躍する技術者たちの思いを、【#医療機器開発者インタビュー】として連載でお届けします。
第1回となる今回は、国内外向け透析関連装置のソフトウェア開発を手がける、片山 雄貴氏に話を聞きました。
片山 雄貴:メディカル事業本部 技術部 所属。前職で調剤機器開発に携わった後、2015年 日機装に中途入社。現在は、透析装置や透析液供給装置などをはじめとした “透析関連装置” の、ソフトウェア開発を主に担当する。(※所属・肩書は取材時点のものです) |
調剤機器開発からの転身「患者さまに直接使っていただける装置の開発に携わりたい」
――本日はよろしくお願いします!まずは、片山さんのこれまでのキャリアから教えてください。
ファーストキャリアは調剤機器を主に扱うメーカーで、日機装が2社目です。前職では、飲み間違いを防ぐためにお薬を「朝」「昼」「夕」などそれぞれに分けて包む機能を備えた “分包機” の開発に、3年ほど携わりました。
――ファーストキャリアから、医療にまつわる機器開発に携わられていたのですね。この道を志したきっかけは何だったのでしょうか。
幼少期から動物が好きで獣医に憧れていたことが、いまにつながっていると思います。獣医になる夢は叶わなかったものの、進路を考えるにあたって「生命や健康に関わるものづくりがしたい」という思いが強くありましたね。
そこから工学部を選び、「将来技術者として活躍するために、競争力を高められる知識を身につけよう」とバイオサイエンスを専攻。学んでいく中で、次第に医療機器開発の分野での就職を考えるようになりました。
――希望を叶え携わられていた調剤機器開発の仕事から、転職を考えるようになったのはなぜですか?
実は、当時は転職をしようとは思っていなかったんです。働く中で転職エージェントの方からご連絡をいただき、日機装からのオファーについてお話を伺ったのがきっかけでした。
日機装のことは学生時代から知っており、「透析装置でとても有名なメーカー」として認識していたのですが、開発部隊が遠方にあったこともあり、就職活動時には視野に入れていなかったんです。
しかし社会人生活の中で、より “自分のやりたいこと” にフォーカスするようになった際のオファーだったこともあり「日機装で、患者さまに直接使っていただける装置の開発に携わりたい」と強く感じて。当時、入社して3年が経つタイミングで、技術的に手応えを感じ始めていたことも後押しになり転職を決めました。
――オファーを受けた際の、日機装に対する印象はいかがでしたか?
国内で医療機器の開発・製造を手がけ、かつこれだけの規模を持つ会社はほとんどない中、バイオマテリアルや機械設計、ソフトウェア、……と多様な分野を掛け合わせる「透析装置」を扱うという点で、可能性の広さを感じました。正直、オファーを受けたときは嬉しさと驚きが大きかったですね。
技術者に求められるのは、仕様を満たし装置の妥当性を担保すること
――現在はどのような組織で、どのような業務を担当されているのでしょうか。
現在は、透析関連装置のソフトウェア開発を主に担当しています。ソフトウェアの設計開発組織としては40名ほどです。
ソフトウェア開発と言っても、単にコードを書くだけではなく……
- 装置に求められる機能が正しく実装されているか
- 治療の有効性や安全性が実現されているか
- 保守・メンテナンスの機能が担保されているか
- 法規制が遵守されているか
などのさまざまな要素を見ながら、仕様を満たして装置の妥当性を担保することに取り組んでいます。
――同じ業界ではあるものの他分野からの転職ですが、業務知識や技術面のキャッチアップはどのように行われましたか?
OJT制度が設けられているので、1年ほど先輩社員と一緒にお仕事をしながら、日機装における業務の進め方や未経験の領域について知識を身につけていきました。もちろん、OJTが終わった後にいきなり一人で業務に取り組むということはなく、その後も皆さんとプロジェクトの中で関わり合いながら、キャッチアップしていくことができます。
ただ中途入社の場合、ある程度求められる技術力をクリアしたうえで入社するので、新入社員研修のように一から教わるようなことはありません。技術者である以上は、ある程度自発的に技術を身につけていこうという思いで取り組んでいましたね。
――転職を経て感じたギャップや、苦労されたことなどがあれば教えてください。
扱う機器の違いによる「認証取得の難易度」「リスクに対する考え方」の変化が大きいなと感じます。
医療機器はリスクの程度に応じてクラスⅠ~Ⅳの4分類に分けられているのですが、透析関連装置は不具合が生じた場合に人体に与えるリスクが比較的高い「クラスⅢ 高度管理医療機器」に相当します。そのため、調剤用の機器と比べると認証を取得するハードルが大幅に高くなるんですね。
国内外の機関に申請を出すために、技術者として安全性や有効性を証明しなければいけない、そして承認を得て製品を出すまでに多くの期間がかかる、という点で前職との違いや大変さを感じています。
――リスクに対する考え方の違いについても、くわしくお聞かせください。
やはり日機装が扱う透析装置は “患者さまに直接使っていただく装置” なので、基本的に「リスクベース」のものづくりが求められます。
前職でも当然安全性は大切にされていますが、「安全とユーザビリティのバランスをとる」側面がありました。この点は、現在の開発における「安全のうえにユーザビリティがある」という姿勢と、大きく異なる印象です。
“技術者ならでは” の視点を大切に、よりよい機器をより早く届けたい
――片山さんが現在感じられている、仕事のやりがいと課題を率直にお聞かせください。
「生命や健康に直接関わる仕事」というのは昔からずっとやりたかったことなので、その仕事に携われていることに大きなやりがいを感じています。先ほどお伝えしたような透析装置開発ならではの大変さもありますが、やりたいことだからこそ前向きに臨めている感覚ですね。
取り組むべき課題だと捉えているのは、製品の上市スピードを高めることです。安全性が重視されるので、時間がかかるのは仕方がないという考えもあるとは思いますが、やはりメーカーとしてはよい製品をどんどん届けていきたいですよね。技術者の視点で、安全性を重視しながらスピードを高める方法を模索していきたいと思っています。
――課題の解決に向けて、現在具体的に取り組まれていることはありますか?
ものづくりをスムーズに進めるために定められた「設計開発フロー」があるのですが、スピードを高めるためにもフローを見直して改善していこうとチーム内で話しています。ツールを導入したり、手戻りを減らすためにプロセスを変更したり。課題を一つひとつ地道に潰していこうと取り組んでいるところです。
――今後、日機装の技術部でチャレンジしたいことがあれば教えてください。
いままでにないような臨床学的に価値のある医療機器を、“プロダクトアウト” で市場に投入してみたいという思いがあります。
医療機器を作るにあたって、市場の動向やお客さまのご要望を把握するのですが、その中で「ドクターの気づきや求めるものと、技術者の気づきは違う」と感じることがあります。
ドクターはやはり目の前の患者さまにフォーカスされるので、短期で効果の出るような機能や装置を望まれる傾向があります。一方で、もう少し引いた視点から「どのような装置があれば、透析医療がより良くなるか」「本当によいものとは何か」と考えるのが、技術者ならではの視点なのかなと。
この視点は、現在の治療のあり方を大きく変えるような場面で活きてくるのではと思うので、技術者の視点でつくった製品が市場でどのように評価されるのか、今後挑戦してみたいなと思っています。
「技術力があっても、医療機器開発は一人ではできない」
――後半は、“日機装で働く” ことをテーマにお話を伺います。まずは技術者の視点から見た、日機装ならではの強みを教えてください。
たくさんありますが、まずはやはり社内に製造・開発・営業の3機能を備えていることが大きいのではないでしょうか。
これによって、“マーケットイン” の開発において現場の声を反映するスピードが高くなり、また “プロダクトアウト” の開発についても、社内の豊富な知見と供給実績を活かした新しいものづくりに繋がるのだと思います。
もう一つ、医療機関の方々の声を活かした開発も、日機装ならではの特徴です。COVID-19によるパンデミックによって頻度は下がってしまいましたが、技術者が透析クリニック様へ足を運ぶこともあります。現場では新しい製品を使った治療の状況を見させていただいたり、ドクターや臨床工学技士の方々と直接お話しし、ソフトウェアバージョンアップに対するフィードバックをいただいたりしています。
こういった距離の近さは、国内ではじめて透析装置を開発して以来、透析医療の普及に向けて医療機関と共に歩んできた歴史があるからこそだと思っています。
――働く中で感じる、日機装の組織文化とはどのようなものでしょうか。
医療機器開発は個人ワークではなく、チームで進めていくものなので、仕事におけるコミュニケーションが重視されています。「突出した技術を持つ人がいたとしても、一人ではものづくりはできない」という考えがベースにありますね。
先ほど、ソフトウェア開発において技術者が考えなければいけないさまざまな要素をご紹介しましたが、これも一人ですべてをカバーするのではなく、皆で割り振って検討して。個々でも全体でも進捗を確認し合い、困ったときには声をかけ合いながら、連携して開発を進めています。
――今後、どのような方と一緒に働きたいですか?
医療機器開発の仕事においては、毎日決められたことを繰り返すのではなく、日々「どうしたら課題を解決できるか」を考えながら進めることが求められます。そういった環境では、自分なりの考えを持って仕事ができる方が活躍されるのではと思っています。
ご自身で「こうしたい」「こうなりたい」という思いや考えを持っている方と、一緒にものづくりをする中で高め合っていけたら嬉しいですね。
――ありがとうございます。それでは最後に、日機装で共にものづくりをする未来の仲間に向けて、メッセージをお願いします。
私はいま、日本の、そして世界の医療をもっとよいものにして、自分の家族や友人が暮らしやすい環境をつくっていきたい、という思いで医療機器開発に携わっています。そんな思いに少しでも共感してくださる方にご入社いただけることを、心待ちにしています。
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