日機装の文化
2023/03/13
さらなる日機装のイノベーションをつくる 〜メディカル技術センターの設立にあたって〜
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目次
世界的に透析治療を必要とする患者さまが増加し、また日本においては急速に高齢化が進む昨今。国内外向け透析装置の開発を手がける日機装に寄せられるニーズも、年々多様化・高度化してきています。
日機装では、このような社会変容の中で医療に貢献し続けるために、私たちの原点である既存の独自技術を進化させるとともに、新たな技術を生み出すことを目指し、新研究開発拠点として「メディカル技術センター」を東京都東村山市に開設。2023年1月より稼働を開始しました。
今回は、メディカル技術センター長を務める横山 和巳氏にインタビュー。新拠点開設に込められた思いと施設の魅力について、詳しく話を聞きました。
横山 和巳:メディカル事業本部 メディカル技術センター長。1987年に新卒入社後、長年透析装置の開発に携わる。威高日機装 副総経理や金沢製作所 統括を務め、現在はメディカル技術センター長として、医療現場に付加価値を提供する新製品設計や技術開発のマネジメントに取り組んでいる。 (※所属・肩書は取材時点のものです) |
拠点再編で製品開発力を強化し、社会やお客さまのニーズに応える
――今回は、メディカル事業の新たな研究開発拠点として開設された「メディカル技術センター」について、詳しくお話をお聞きしていきます。まずは、拠点新設の背景から教えていただけますか。
横山:昨今透析患者さまの数はアジアを中心に増加しており、今後も透析治療の需要が高まっていくことが見込まれます。そのような中では、透析患者さまの生命をつなぐため、そして治療を続けるにあたっての心身の負担を軽減するために、私たちがより良い透析治療をご提供することが重要になっていきます。
また、高齢化が進む日本においては、透析患者さまの中でも高齢者の方の比率が高まっており、容態が安定した状態を維持したまま安全に透析治療を行うことの難しさも増してきました。
治療を進める上では、医療従事者の方々が「それぞれの患者さまに対してどのような条件で治療を行うべきか」を見極めて判断していますが、これからは透析装置がそうした判断の材料となる情報をご提供し、治療の一端を担えるようになることも期待されています。
このように多様化・高度化する、社会やお客さまから日機装に寄せられるニーズに応えるために、製品開発力を強化するべく新設したのが「メディカル技術センター」です。
――東村山に新設されたメディカル技術センターの概要をお聞かせください。
横山:メディカル技術センターは、当社の東村山の拠点に新たに開設したメディカル事業の研究開発施設です。もともと静岡にあったメディカル事業の研究開発機能を東村山にある日機装技術研究所に移管しました。2023年1月から正式に稼働を開始し、ここで医療機器の開発や品質保証の取り組みをトータルで手がけています。
センター全体で掲げているコンセプトは「人と人との “交流”」です。日本の中心地とも言える東京に拠点を構えることでさまざまな交流を促し、これまでにないイノベーションを起こすことを目指しています。
――どのような “交流” をこの拠点から生み、それによってどのような影響や変化が生まれることを期待されていますか?
横山:私たちが今持っている技術や考え方だけで、閉じた世界でものづくりをしていては、「お客さまや患者さまの求める新たなものを開発し続ける」という使命を果たすことはできません。この考えに立ち、医療従事者の方々と交流しながらしっかりと意図を汲み、求められるものを作りたいという思いがあります。
また、ものづくりをするにあたっては、部品の作り方や性能まで熟知していることも重要です。製品づくりに協力頂いている会社さまのもとに出向いて加工方法を自分たちの目で見ることで、部品にまつわる知識を製品の設計に反映させるなど、技術開発に活かすことができるのではないかと考えています。
さらに東村山の日機装技術研究所には、メディカル事業だけでなくインダストリアル事業・航空宇宙事業の研究開発機能も集まっており、今回のメディカル技術センターの開設によって技術者同士の距離は大きく縮まりました。
それぞれの部門に「インダストリアル部門ではこのような方法で生産を自動化して効率を高めている」「航空機ではこの材料をこのような方法で活用している」といった、その部門ならではの知識や経験があります。それらを応用して取り入れたり、新しい発想に結びつけたりしていければと期待しています。
人と人との “交流” を後押しする仕掛けにあふれた新拠点
――メディカル技術センターの、施設の特長や魅力を教えていただけますか?
横山:交流をコンセプトにした施設ということで、全体として “オープン・自由であること” がキーになっています。
フリーアドレス制度を導入し、社員は自由に場所を選択しながら働くことができます。美味しいコーヒーを飲みながら作業できるスペースや外の空気が吸える開放的なテラスもあるなど、リフレッシュしながら仕事に打ち込めるのが特徴です。
また、予約不要で使えるフリースペースもたくさん設けられており、「アイディアに行き詰まった」「仲間に確認や相談がしたい」といったタイミングで、ざっくばらんな対話が生まれる場になっています。
また、設計などの事務作業を行う「執務室」と製品の試験や評価を行う「試験室」はこれまで別の部屋になっていましたが、新拠点ではこの二つをガラスで仕切り、それぞれの部屋から相手の様子が見える作りに。
装置を前にして事務作業をしたり、双方の部屋を行き来して対話をしながら試験や評価を進めることもでき、このような仕組みを最大限活用していきたいところです。
――実際に働いている社員の方からの評判が良い施設はありますか?
特に満足度が高いのは、質が高く美味しいと評判のカフェテリアです。ここでの食事をモチベーションにしている社員も多いようで、栄養バランスの良い日替わり定食から定番メニューまで、多様な食事を楽しめます。
パーテーションの設置など感染対策をしっかりと施し、一定の範囲内で対話もできるようになっており、よく知るメンバーとも、そうでない人とも、このカフェテリアで同席したことを機にコミュニケーションが生まれています。
さらに、このような自由度の高い施設・働き方の中で業務効率や能動的なコミュニケーションを維持しやすくするために、IoTインフラを導入しているのも大きな特徴の一つです。
社員一人ひとりが電波を発するタグを持っており、メディカル技術センターの建物内(プライバシーエリアを除く)であれば「誰がどこにいるか」をPCやスマートフォンから簡単に確認できるようになっています。
技術者の場合、評価試験や部品加工のために特殊な試験室や作業室に一日中こもりっきりで試験や作業を行うといったこともありますので、「誰がどこにいるか」が把握できる仕組みはとても役立っています。
単に居場所がわかるというだけでなく、今取りかかっている作業であれば少し相談しに行っても大丈夫かなとか、ちょっと現場から離れて打ち合わせに参加してもらっても大丈夫そうだなというように、相手の状況を推測して対応することもできるので、コミュニケーションをとりたい相手がいるときなどに活用してもらえれば嬉しいですね。
――交流を促進する仕掛けが各所に散りばめられているのですね。他に、施設のこだわりのポイントがあれば教えてください。
横山:製品の品質や安全性向上のため、最新の規格に適合した設備導入や、施設の設計上の工夫によって、質の高い研究を安全に行える環境が整えられています。
感染性廃棄物を適切に処理できる設備を設けた、血液を扱う試験ができる部屋や最新規格の「電波暗室」、また過酷な温湿度環境を設定し、長時間連続で装置を稼働させ続けることで製品の安全性を確認する「連続試験室(Continuous Lab.)」など充実した施設になっています。
医療従事者や研究機関との対話の中で、“日機装の透析装置にできること” を追求し形にしていきたい
――メディカル技術センターでの研究開発を通して、今後提供していきたい価値とはどのようなものですか?
横山:これまで日機装は、透析装置のパイオニアとして、装置の開発や製造・販売、メンテナンス、さらに医療従事者や患者さまの負担を軽減する取り組みを続けてきました。この部分に対してはある程度貢献できてきたのではないかと自負していますが、日本の透析医療を支えるために、今後はさらにもう一歩踏み込んでいければと思います。
冒頭にお話ししたような医療従事者の方々の負担を軽減するために、治療条件の決定に必要な情報を透析装置が提供するなど、実際の “治療” のサポートにも挑戦していくことを今後のテーマとして掲げています。
ただ、これはメーカーである私たちだけで進められる取り組みではありません。医療従事者の方々と、あるいは研究機関の方々などとコラボレーションしながら、その中で「私たちの製品に何ができるのか」を追求し形にしていきたいと思います。
――ありがとうございます。それでは最後に、日機装で共にものづくりをする未来の仲間に向けて、メッセージをお願いします。
横山:医療機器を作る仕事において大切なのは、お客さまに求められるものを届けるために、品質と安全性にこだわりながら新しいことにチャレンジし続けていくことだと考えています。
責任を持ってものづくりに取り組める方、自分でやりたいことを持って前向きに取り組める方が仲間になってくれることを心待ちにしています。
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