くらしを豊かに
2026/08/14
「空飛ぶクルマ」の実用化はいつ?eVTOLの基礎から最新情報まで徹底解説 (2026年8月更新)
- 航空宇宙事業
- CFRP
- eVTOL
- 航空機
- 技術開発
目次
世界各国で開発が進む「空飛ぶクルマ」ことeVTOL(イーブイトール)。日機装は、これまで航空宇宙事業で培ってきた高度なCFRP成形技術を活かしたeVTOLの部品を提供し、新たな空のモビリティの発展に貢献しています。
本記事では、eVTOLの基本構造から実用化に向けた課題、最新の開発動向までを解説します。
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eVTOLの基礎知識

eVTOL(空飛ぶクルマ)とは
eVTOLは、ドローンのしくみや電気自動車(EV)に用いられる技術などを組み合わせた、電動で垂直に離着陸できる新しい空のモビリティです。電動モーターで揚力や推力を生み出し、航空機よりも低い高度で都市や山間部を飛行します。
- 略称:eVTOL(Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft)
- 読み方:イーブイトール
日本では「空飛ぶクルマ」とも呼ばれています。
ヘリコプターとの違い
eVTOLとヘリコプターは、同じく「ローターを回転させる乗り物」で見た目が似ていますが、明確な違いがあります。eVTOLの特徴をヘリコプターと比較してみると、両者の間には次のような違いがあります。
ヘリコプター | eVTOL | |
動力源 | 燃料 | バッテリー |
ローターの数 | 1基 | 複数 |
操縦 | パイロットが操縦装置を操作 | 自動飛行との親和性が高い |
電動化されていることから、駆動時の騒音や温室効果ガスの排出を抑えられるのがeVTOLの特徴の一つです。
さらに燃料系統や複雑な回転機構も不要になるため、ヘリコプターと比べ、構造がシンプルで部品点数が少ない機体に。整備のコストや故障のリスクを抑えることにもつながります。
また、ヘリコプターではローターが一つ故障すれば飛行が難しくなってしまいますが、eVTOLでは小型のローターを複数搭載しているため、一部のローターの故障を他で補えるとの見方もあります。
eVTOLの実現がもたらすメリット
バーティポート(離着陸場)の自由度の高さや騒音の少なさを特徴とするeVTOLの実用化が叶えば、
- 離島や山間部などアクセスの悪い場所への物流・移動手段として活用できる
- 道路交通が遮断された被災地への物資輸送や、救急搬送にも対応できる
- 公共交通機関の混雑や道路の渋滞を避けた、スムーズな通勤・通学が叶う(※)
など、さまざまなケースでメリットが生まれると考えられています。
※eVTOLの中でも、都市部における通勤・通学などの交通渋滞解消に着目して開発が進むものは「UAM(アーバンエアモビリティ)」と呼ばれます。
eVTOLはいつ実現する?

空飛ぶクルマの構想を実現するには、官民が連携して「技術開発」と「環境整備」を並行して進めていくことが欠かせません。
こうした考えから設立された、官民の関係者による「空の移動革命に向けた官民協議会」では、両者が歩調を合わせて取り組むべき課題について議論が重ねられ、2018年12月には「空の移動革命に向けたロードマップ」が取りまとめられました(※)。
※2026年3月27日に改訂
大阪・関西万博でデモ飛行を実施
このロードマップが示した道筋を。実際の運航を通じて検証する重要な機会となったのが、2025年の大阪・関西万博です。夢洲会場のバーティポートを拠点に複数社が飛行し、日本初の大規模実証が実現。多くの人々の目に「空飛ぶクルマ」が現実のものとして印象付けられました。
万博でデモフライト/展示を行ったeVTOL
- 丸紅×Lift Aircraft「HEXA」:4月と7月に合計29フライトを実施。EXPO Vertiport内を飛行
- SkyDrive「SD-05」:7~8月にかけて合計17フライト実施。EXPO Vertiportの 周辺を飛行
- ANA×Joby Aviation「Joby S4」:9月~10月にかけ、合計35フライトを実施。EXPO Vertiportから会場西側海上を飛行
- Soracle×Archer Aviation「Midnight」:格納庫内で機体を展示
万博を通じて得られた知見は、バーティポートの整備や運航ルールの策定といった本格導入に向けた検討に活用されており、2026年3月のロードマップ改訂にも反映されました。
(参照:第12回 空の移動革命に向けた官民協議会(METI/経済産業省))
万博でのデモフライト現地レポはこちら

2027年~2028年にかけて日本で商用運航を開始
(出典:国土交通省「空の移動革命に向けたロードマップ(2026年3月27日改訂)」)
2026年3月27日、国土交通省と経済産業省は「空の移動革命に向けた官民協議会」(第12回)を開催し、約4年ぶりに「空の移動革命に向けたロードマップ」を改訂しました。今回の改訂では、商用運航の開始時期が初めて明確に示されました。
<改訂のポイント>
- 2020年代後半:2027〜2028年に商用運航開始。まずは遊覧飛行からスタート
- 2030年代前半:遠隔操縦による旅客輸送のための制度を整備
- 2030年代後半:自動・自律運航を一部実現
eVTOLの実用化に向けた課題

続いて、空飛ぶクルマ「eVTOL」の実用化に向けた課題を大きく3つピックアップしてご紹介します。
技術進展
運航できる距離が長くなるほどeVTOLが活躍できる場面が多くなることから、安全に・長い距離を運航するための技術開発が進められています。
特に重要な課題は、「軽くて高容量の電源を確保するための、バッテリー技術の進展」と「機体の軽量化」の二つ。現在の機体の多くはリチウムイオン電池を搭載していますが、より高容量・高出力を実現できる全固体電池(※1)の実用化や、軽くて強度の高い炭素繊維強化プラスチック(CFRP)(※2)を用いた機体開発への期待は依然として大きく、航続距離や搭載重量の拡大に向けた開発競争が続いています。
※1 すべての部材が固体である電池
※2 プラスチックに強化材として炭素繊維を加えた複合材料
インフラの整備
eVTOLが新たな移動手段として定着するためには、機体の開発だけでなく運航を支えるインフラの整備も欠かせません。
バッテリーの充電・交換設備を備えた離着陸場所の建設や、衝突などの事故を避けて安全に運航するための空域管理、無線通信システムの構築などを進めていく必要があります。
法と制度の整備
安全な運航に欠かせないもう一つの要素が、法律や制度の整備です。
飛行機やヘリコプター、ドローンなどには、それぞれに「どのような機体であれば / 操縦者がどのような技術を持っていれば、運航して良いか」「どのような場所で飛ばして良いか」といったルールが設けられています。
eVTOLは既にある乗り物とは違う特徴を持つため、国は航空法などの見直しと新たな基準づくりを進めてきました。2025年の大阪・関西万博ではデモ飛行が実現した一方、安全審査に時間を要し商用運航は見送られました。
eVTOL各メーカーの開発状況
現在は企業規模・国内外を問わずさまざまなメーカーが、eVTOLの開発を競って進めています。ここでは、主要メーカーの開発状況をご紹介します。
| メーカー | 拠点 | 認証・開発の状況 | 商用化の状況・目標 |
Joby Aviation | 米国 | FAA型式証明の最終段階 | 2026年内に米国・ドバイで商用運航の開始を目指す |
SkyDrive | 日本・愛知 | JCAB「全般計画書」合意・ADO取得 | 2028年の商用運航開始を目指す |
Archer Aviation | 米国 | FAA型式証明の最終段階 | 2026年内に米国・アブダビで商用運航の開始を目指す |
EHang(億航) | 中国・広州 | CAAC型式証明を取得(2023年、世界初)+運航者証明(2025年) | 中国国内で2025年より商用運航中(パイロット無しの無人旅客輸送) |
Eve Air Mobility | ブラジル(Embraer傘下) | 2025年12月に初飛行、2026年に遷移飛行試験を予定 | 2028年の商用運航開始を目指す |
Joby Aviation:世界各地での運航開始に向け最終段階へ
出典:Joby Aviation社
eVTOLの開発を手がけるアメリカのスタートアップ Joby Aviation。これまでに累計5万マイル(数千回)以上の飛行実績を積み重ね、2026年3月には米国連邦航空局(FAA)型式証明の全4段階のうち、3段階目を完了。最終段階に入り、商用運航まであと一歩に迫っています。
同社はデルタ航空(米国)・ANAホールディングス(日本)・ドバイ道路交通局(UAE)との提携を軸に、米国・日本・中東での展開を並行して進めています。トヨタ自動車も同社に注目し、総額8.94億ドルの出資を行うとともに、生産技術・品質管理の分野で協業。2026年6月には両社で合弁会社の設立に合意するなど、連携を深めています。
米国では、大統領令に基づくeVTOL統合パイロットプログラム(eIPP)のパートナーに選定され、FAA型式証明取得前であっても最大11州での早期運航開始が可能となりました。
日本では2025年の大阪・関西万博でANA塗装機によるデモフライトを実施。その後提携を拡大し、合弁会社の設立と100機以上の配備計画のもと、最短2027年の東京エリアでのサービス開始を目指しています。
そしてドバイでは2026年中の有償旅客サービス開始を見込んでおり、米国に先立つ商用運航となる可能性があります。
(参照:Joby Reports First Quarter 2026 Financial Results :: Joby Aero, Inc. (JOBY),Jobyとトヨタ、空のモビリティ実現に向け、電動垂直離着陸機(eVTOL)の生産を行う合弁会社の設立に着手 | コーポレート | グローバルニュースルーム | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト, Joby to Begin U.S. Operations in 2026 Under White House Air Taxi Program | Joby Aviation)
SkyDrive:東京都内でデモ飛行に成功。2028年の商用化を目指す
株式会社SkyDriveは、空飛ぶクルマと物流ドローンの開発を手がける愛知県のスタートアップです。日本で初めて国土交通省航空局(JCAB)に型式証明申請が受理され、2026年3月には型式証明プロセスの中核となる「全般計画書」の合意に至りました。翌4月には「航空機設計検査認定事業場(ADO)」を取得し、自社で機体設計の検査・証明を行える体制を確立。さらに、米国での型式証明活動も進めています。
2026年2月には東京ビッグサイトでの空飛ぶクルマのデモフライトを実施。限られたスペースからの離着陸や海上への飛行を通じて、都市部での運用を想定した性能を披露しました。
また、機体の製造・開発ではスズキと提携しており、安全で高品質な機体の量産化を目指しています。
(参照:SkyDrive、型式証明プロセスの中核「全般計画書」について国土交通省と合意 | 株式会社SkyDrive, 国内初!空飛ぶクルマ開発企業として国土交通省より「航空機設計検査認定事業場(ADO)」を取得 | 株式会社SkyDriveのプレスリリース,SkyDrive初!東京での空飛ぶクルマのデモフライトに成功 | 株式会社SkyDrive」)
Archer Aviation:型式証明が最終段階に。LA五輪のエアタクシーパートナーに選出
Archer Aviationは、eVTOL機「Midnight(ミッドナイト)」を開発する米国のスタートアップです。FAAの型式証明プロセスにおいて、最終段階の実証飛行に入っており、2026年内の運航開始を目指しています。Jobyと並んでeVTOL統合パイロットプログラム(eIPP)に選定されたほか、2028年ロサンゼルス五輪のエアタクシーパートナーにも選ばれました。
米国以外ではUAE・アブダビで2026年後半の商用サービス開始を計画。日本においても、住友商事と日本航空が共同設立したSoracleと提携し、大阪を中心にエアタクシーサービスの実現を目指しています。2025年の大阪・関西万博では、「Midnight」の実機サイズモデルを展示。来場者が機体内部の客席を体験できるイベントが行われました。
(参照:Archer Aviation - Archer Announces First Quarter 2026 Results, Highlighting Record FAA Certification Progress With Initial US Operations Expected In 2026, soraclecorp.com/press/250604/)
Ehang(億航):中国国内で商用運航を開始。海外展開も拡大
EHangは中国・広州を拠点とするeVTOLメーカーです。主力モデルは2人乗りの「EH216-S」で、パイロットを乗せず自律飛行する点が特徴です。2023年10月には中国民用航空局(CAAC)から世界初となる無人旅客輸送向けeVTOLの型式証明を取得し、2025年には中国国内において商用運航を開始しました。
海外展開も推進しており、2026年7月時点で22か国においてデモフライトを実施済みです。日本でも尼崎やつくばなどで実証試験が行われたほか、能登半島先端地域では物資輸送に特化した「EH216L」モデルによる災害対応や地域間移動などへの活用可能性が検証されました。
(参照:AirXパートナー企業のEHang社、中国で空飛ぶクルマ「EH216-S」の型式証明の取得完了 | 株式会社AirXのプレスリリース, EHang | EHang’s EH216-S eVTOL Operators Obtain Air Operator Certificates, 【能登復興支援】国内初!物資輸送用「空飛ぶ車」EH216L(最大積載250kg)の試験飛行【8月13日:石川県珠洲市】 | 一般社団法人日本ドローンビジネスサポート協会のプレスリリース)
Eve Air Mobility:受注拡大で商用化に向けた動きが加速
ブラジルの大手航空機メーカーEmbraer(エンブラエル)傘下のスタートアップであるEve Air Mobilityは、eVTOL機の開発を進めています。2025年12月に試作機の初飛行を成功させ、現在は垂直飛行から水平飛行への遷移飛行試験などに取り組んでいます。
また、受注の動きが拡大しており、約2,700機のeVTOLプレオーダー(意向表明を含む)を獲得しています。2026年7月にイギリスで開催された国際航空ショーではShearwater社(最大16機)、Moov社(最大30機)と新たに意向表明書(LoI)を交わしました。日本では、空の交通デジタルプラットフォームを開発するAirX社と、eVTOL 2機(最大50機)の導入に向けた基本契約を締結しています。
(参照: Eve Air Mobility Touches Down at Farnborough with Real Flight Progress and a Clear Path to Certification – Eve,Eve Air Mobility Secures an Order for Up to 16 eVTOL Aircraft from Shearwater Global Capital, Bay Point’s Aviation Finance Company – Eve, Eve Air Mobility and Moov Sign LOI for up to 30 eVTOLs to Explore Tourism and Regional Mobility in Cabo Verde – Eve,AirX、Eve Air MobilityとeVTOL航空機2機の導入に向けた基本契約を締結 | 株式会社AirXのプレスリリース)
空飛ぶクルマと日機装
米国カリフォルニアJoby Aviation工場にてJoby社員とともに試作に取り組む、当社 技術/製造のエキスパート(Joby Aviation社提供)
日機装は、2021年にJoby Aviationのサプライヤーに選出されています。機体の軽量化を叶えるためにCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製の部品が多く用いられる見込みであることから、日機装がCFRP製航空機部品製造でこれまでに培った技術と経験を活かして、安定した品質の量産実現に取り組んでいます。
2022年3月には、米国カリフォルニアの製造工場において、Joby社とサプライヤーが互いの知見を持ち寄り、製品化に向けた製造方法などを検討する研修会が実施されました。日機装のエンジニアもこれに参加し、実際に試作機の作業工程に参加しながら、将来的な量産へ向けたサポートを行っています。
日機装が手がけるCFRP加工について、詳しくはこちら

eVTOLにまつわるQ&A

eVTOLを運転するには免許が必要?
eVTOLのパイロット・整備者にどのような資格や基準を設けるべきかについては、現在「空の移動革命に向けた官民協議会」で検討が進められています。将来的には、操縦しやすい機体特性を踏まえた、eVTOLに適した新たな技能証明制度の整備が検討されています。一方で、国交省のロードマップでは、2030年代以降、遠隔操縦やパイロットを必要としない自動・自律型への移行も想定されています。
eVTOLの値段は?
2026年7月時点で、旅客用eVTOLの多くは開発・受注段階にあり、1機あたりの価格を公表しているメーカーはほとんどありません。価格は機体構造の複雑さや航続距離などの条件によっても大きく異なります。
数少ない例として、EHangの主力モデル「EH216-S」は、2024年2月に海外向け小売価格が41万米ドル(約6,000万円)と発表されています。そのほか、SkyDriveの初号機が約2億円で購入されたという報道もあります。
(参照:EHang Unveils US$410,000 Suggested Retail Price for EH216-S Pilotless Passenger-Carrying eVTOL Aircraft in Global Markets Outside China, SkyDrive's $1.5 million 'flying car' gets its first private customer - The Japan Times)
一般の人でも乗れるようになるのはいつ?
2025年の大阪・関西万博では、当初期待されていた「一般客を乗せた運航」は実現しませんでしたが、複数のメーカーによる公開デモ飛行が成功し、安全性の確認や騒音データの収集といった大きな前進がありました。
今後は、安全基準の整備や機体の認証取得、運航ルールの確立などを経て、段階的にサービス開始が目指されます。
まとめ
新たなモビリティ=移動手段として世界中で注目が高まる、eVTOL。社会実装に向けて、高性能バッテリーの実用化や機体の軽量化といった「技術開発」とその運航を支える「インフラ・法制度整備」への取り組みが進められています。
日機装は、これまでCFRP製航空機部品の製造で培ってきた技術を活用してeVTOLの機体軽量化に尽力し、eVTOLの安全・長距離運行の実現に貢献してまいります。

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