いのちの現場

2024/10/23

進化する中国の血液透析治療|患者さまの快適な治療を支える、西安新慷楽血液透析センターと日機装の技術

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進化する中国の血液透析治療|患者さまの快適な治療を支える、西安新慷楽血液透析センターと日機装の技術

目次

1969年に日本で初めて人工腎臓装置の国産化を実現して以来、血液透析装置のパイオニアとして、日本の透析医療をリードしてきた日機装。近年は、日本だけではなく世界中の医療機関に製品を提供しています。

今回は、中国内陸部にある陝西省西安市の西安新慷楽血液透析センターで、日機装の血液透析装置をご利用いただいている俞翔(Yu Xiang)院長にインタビュー。中国における血液透析治療の現状や透析治療において同院が大切にしていることについて伺いました。

インタビューを受ける俞翔(Yu Xiang)氏

俞翔(Yu Xiang):西安新慷楽血液透析センター責任者(院長)。中国非公立医療機関協会 腎臓病透析専門委員会で常務委員も務める。

患者さまにとって快適で、質の高い血液透析治療を提供するために

――本日はよろしくお願いします。まずは、中国における血液透析治療の現状についてお聞かせいただけますか。

2012年に透析治療の保険適用が大幅に拡大したことを機に、中国では透析患者数が急増しています。最新のデータでは、2023年末時点で中国大陸だけで91万人を超える患者さまが透析治療を受けています。このような状況を受け、中国政府は透析医療の向上に積極的に取り組んでいます。

――透析医療の向上について、詳しく教えてください。

中国では終末期腎臓病の予防と管理に力を入れており、治療法や血液透析技術は日々進化しています。特に、ダイアライザー(血液透析器)や血液回路、穿刺(せんし)針などの消耗品の調達を国が管理するようになったことで、医療機関は高品質な消耗品を安価に利用できるようになりました。

これらの結果、治療の質が向上し、患者さまの生存率も高まっています。

また、各地で透析施設や設備の拡充も進み、医療保険の適用範囲も拡大したことで、患者さまが治療を受けやすくなりました。十分な頻度で治療を受けられるようになったことで、より豊かな生活を送ることができる患者さまも増えています。

――日本では、透析治療を週に3回、1回あたり4~5時間かけて行うのが一般的ですが、中国でも同様でしょうか?

基本的には同様ですが、地域や経済状況によって異なります。例えば、北京など経済状況の良い都市では週に4回透析を行うケースもあります。一方で、中西部の地域では2週間に5回治療を行うケースが比較的多い状況ですが、これも改善されつつある状況です。

治療時間についても4時間程度が一般的ですが、当院では治療品質向上のために、週に3回、1回あたり5時間の透析を選択する患者さんも7割程度いらっしゃいます。このような患者さまの透析の効果や健康状態は、非常に良好です。

――患者さまが急増する中、現場で生じている課題、特に留意されているポイントなどはありますか?

日機装の血液透析装置で治療している様子

患者さまに“十分な”血液透析治療を提供できるかが、大きな課題だと考えています。治療にあたる人材を確保すること、治療の目標基準を満たすことはもちろん、透析中も透析後も快適に過ごせるような治療を提供し、患者さまが継続して治療を受けられるようにすることが重要です。

そのためにも、患者さま一人ひとりに合わせた、きめ細やかな治療方法の調整など、より慎重な対応が求められます。こうして合併症の発生頻度を抑制できれば、薬の使用量も減り、患者さまの経済的負担の軽減にもつながるでしょう。

そこで当院では、尿毒症性物質の除去効率に優れた「ハイフラックスダイアライザー」を投入するとともに、HDF(※1)のような、より体に負担の少ない治療法も提供しています。薬物療法においても、患者さまの状態に合わせた合理的な投与計画を立てるなど、貧血やCKD-MBD(※2)といった長期的な合併症を減らすための様々な取り組みを行っています。

※1:HDF(Hemodiafiltration:血液透析濾過):血液透析(Hemodialysis:HD)に濾過を加えた治療法。血液透析よりも濾過を多量に行うことで、低分子量蛋白を取り除くことができる。オンラインHDFでは、超純水を用いた透析液を補充液として使用されます。認可を受けた高度な装置でしか行うことができず、治療費用も高価だが、体への負担が最も少ない。

※2:CKD-MBD(骨ミネラル代謝異常):慢性腎臓病に伴い、骨からカルシウムが溶け出したり、血管にカルシウムが沈着したりする病気。

高い安全性・安定性と自動化機能、充実したメンテナンスサービスが決め手

――西安新慷楽血液透析センターでは、日機装の血液透析装置を全面的に導入いただいていると伺っております。装置を選定するにあたって、特に重視されたのはどのような点でしょうか。

数ある血液透析装置の中から日機装の装置を選んだ決め手は、安全性・安定性、作業の効率化を実現する自動化機能、そして充実したメンテナンス体制です。

特に、安全性・安定性の高さには魅力を感じました。日機装の装置は、ブラッドアクセス(※3)や体外循環の変化をモニターしてくれるので、患者さまの体に何か異変が起きてもすぐに気づくことができます。透析液も常に清潔な状態で供給されるので、合併症を防ぐ上でも安心です。

※3 :透析を行うために腕等に作成する血液の出入り口となる場所。

作業効率の向上という点では、透析治療の準備や治療中の脱血、返血などの作業をワンタッチで行える自動化システム「D-FAS(Dialysis-Full Assist System)」が有効であると感じました。実際に、スタッフの負担軽減にもつながっています。

また、威高日機装(※4)のメンテナンスチームは中国でも高い評価を得ており、安心して導入することができました。その結果、当院で使用しているすべての透析装置が日機装および威高日機装のもの。現在はDBB-06Sが11台、DBB-07が3台、DBB-EXAが7台、DBB-EXA ESSが2台稼働しており、90名ほどの患者さまがこれらの装置による治療を受けています。

※4:日機装のグループ会社である威高日機装(威海)透析機器有限公司。中国で血液透析装置の製造販売およびメンテナンス事業を行なっている。

日機装の血液透析装置

より安全な治療ときめ細やかな対応ができるようになった

――導入後、実際に患者さまに治療を提供される中で、日機装の血液透析装置をどのようにご評価いただいていますか。

威高日機装のメンテナンススタッフと病院スタッフがコミュニケーションをとる様子威高日機装のメンテナンススタッフ㊧と施設スタッフ㊨

威高日機装のメンテナンスチームには大変お世話になっています。技術者の方々が定期的に当院を訪れ、治療に携わるスタッフとコミュニケーションを取ってくれるので、安心して運用できています。

現在ではスタッフが装置の各機能をしっかりと使いこなせるようになり、安全な治療を安定的に提供できています。透析低血圧などの発生率が低い状態を維持できているのも、日機装グループの装置の性能とサポート体制のおかげだと感じています。

――治療に携わるスタッフの方々からのお声があれば教えてください。

スタッフからは、日機装の装置は非常に使いやすいと好評です。特に、D-FASにより作業負担が軽減され、その分、患者さま一人ひとりと向き合う時間が増えました。よりきめ細やかな対応ができるようになったと、スタッフからも喜ばれています。

これらの点から、日機装の装置は当院にとって非常に心強い存在となっています。今後も、引き続き利用させていただきたいと考えています。

“透析治療を続けること”の重要性を再認識し、メーカーと医療機関で治療の改善に取り組む

――患者さまやスタッフの皆さんにとって、“より良い透析治療”を実現するために、今後、どのようなことに取り組んでいきたいとお考えですか?

病院の壁に描かれた、患者を励ますメッセージ施設の壁に描かれたイラスト。「あなたが思っているよりもあなたには力があるよ、がんばって」というメッセージ

血液透析治療は、患者さまにとっても、医療従事者にとっても、他の治療とは異なる意味を持ちます。病気の治癒が目的ではないので、5年、10年と長期にわたって治療を継続していく必要があり、大切なのは、“治療を続けること”そのものなのです。

この点を常に意識し、患者さまが安心して治療を継続できるよう、安全な治療の提供はもちろんのこと、患者さま一人ひとりと向き合い、長期にわたって寄り添える関係を築いていきたいと考えています。

――最後に、日機装に期待されることをお聞かせください。

笑顔の俞翔(Yu Xiang)院長

日頃のコミュニケーションや当院の技術者を対象としたトレーニングの中で、威高日機装の皆様と課題を共有し、意見交換ができていることを嬉しく思っています。今後は、技術者だけでなく、医療スタッフや看護師を対象としたトレーニングの実施も検討していただけると嬉しいです。装置の有効な機能を最大限に活用しながら、より質の高い医療を提供していきたいと考えています。

また、装置のさらなる進化にも期待しています。例えば、AI技術を搭載することで、透析中の患者さまの状態をスマートに判別し、治療を自動的に調整、対処できるなどの機能が実現すれば、より安全で効果的な治療を提供できると考えています。加えて装置のポータブル性、小型化も期待しています。

今後も一人でも多くの患者さまに安心で快適な透析治療を提供していけるよう、一緒に頑張っていきましょう。