いのちの現場
2024/12/18
すべては、安心・安全な透析治療を届けるために。現場の最前線で活躍する、女性サービスエンジニア・営業の仕事とは
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目次
透析装置の国内シェアが50パーセントを超える日機装。全国各地の患者さまに継続した治療を提供するためには、その地域に根付いて修理や消耗品の管理を行い、装置の安定した稼働を維持する社員の存在が不可欠です。今回は、その重要な役割を担い活躍する、サービスエンジニア職の三島 春花さんと営業職の菅野 恵さんにインタビュー。止めることができない透析治療の現場だからこその使命感や難しさ、医療機器業界では数少ない女性として切り開きたい未来について話を聞きました。
三島 春花:2023年に日機装へ新卒入社。西日本支社大阪営業部のサービスエンジニアとして、透析装置のメンテナンスやトラブル対応、部品の在庫管理等を行う。 菅野 恵:5年間医薬品卸会社で販売担当者として従事した後、2021年に日機装へ入社。札幌営業所にて、北海道内の主に道央エリアの病院やクリニックを対象に、透析装置や関連する消耗品の提案と導入支援を行う。 (※所属・肩書は取材時点のものです) |
日機装との出会いは、学生時代の実習で使用した透析装置
――本日はよろしくお願いします。まずは、三島さんのご経歴と入社理由を教えてください
三島:大学で臨床工学を学んだ後、2023年に新卒で日機装に入社しました。日機装に興味を持ったきっかけは、授業で使用していた透析装置が日機装の製品だったことです。その後、就職活動中に感じた会社の雰囲気や、面接官の方々の誠実な対応に惹かれ、入社を決意しました。
――三島さんの現在の業務内容を教えてください
三島:日機装のサービスエンジニアは全国100名以上いて、各拠点で担当地域の医療機関を受け持っています。現在、私は関西圏の兵庫県、京都府、滋賀県を管轄する西日本支社大阪営業部大阪サービス第二グループに所属し、サービスエンジニア(以下「SE」)を担当しつつ、見積作成のサポートや透析装置の部品在庫管理などの業務サポートも行っています。
大阪営業部のSE職には修理担当SEと施設担当SEという2つの役割があります。修理担当SEはお客さまからの依頼に応じて、その都度いろいろな現場で修理を行うのに対し、施設担当SEは病院やクリニック単位で施設を担当し、その施設全体の透析装置の保守管理を行います。
入社後は、まず施設担当SEに約3ヶ月間同行して、透析医療の現場の全体像を把握しました。その後、修理担当SEとして1〜2年ほどメンテナンス経験を積み、一人前として認められた段階で、施設担当SEの業務を任される場合が多いです。2つの役割を経験することで、自分の適性を鑑みたうえでキャリアパスを描けます。
何があっても、透析治療を止めさせない。修理や機器管理を担うサービスエンジニアの仕事
――三島さんが透析装置の修理に携わる中で、どのような時に仕事のやりがいを感じますか?
三島:トラブルの原因を特定し、無事に修理を終えられた時は安堵しますし、やりがいを感じます。
透析装置の修理は、少しでも対応が遅れると患者さまの命に関わる緊張感のある仕事。装置は24時間365日稼働しているため、夜間に現場へ駆けつけるなど大変な場面もありますが、お客さまからの「ありがとう、助かったよ」という言葉がモチベーションになっています。
――透析装置は専門性の高い機械だと思います。難しさを感じるところはありますか?
三島:特に難しさを実感するのは、スピードと正確性が同時に求められること。故障により治療を中断する時間を最小限にするため、迅速な修理が不可欠です。しかし、「〇〇の警報が出たので修理してほしい」という依頼を受けて現場に駆けつけても、その場で現象が再現しないこともあります。この場合は、手探りで根気強く原因を追求しなければいけません。
また、修理を始める前に、お客さまが希望する完了時間を確認することも大切です。その時間内に必ず修理を終えることを念頭に置きながら、配管や装置のテスト結果を徹底的にチェックして、不具合の原因を突き止めていきます。こうして無事に修理が完了し、お客さまの期待に応えられた瞬間は、やはり大きなやりがいを感じますね。
――入社2年目にして、多くの経験を積まれていると思います。ご自身の成長を実感した瞬間はありますか
三島:先日、透析装置の基板に液体がかかってしまったという修理依頼がありました。現場に出向き、液がかかった基板を交換しましたが、それだけでは問題が解決せず、通常想定しない別の基板にも影響が出ていることがわかりました。基板は全て繋がっているため、一箇所の不具合が他の部分に波及する場合があるのです。しかし、別の基板の修理に必要な部品を持参しておらず、先輩に連絡して持ち合わせていなかった部品を追加で持ってきてもらいました。最終的に修理を完了できましたが、時間がかかってしまいました。
後日、同様に基板に液体がかかり故障してしまったという修理依頼が来た時には、私は前回の経験を踏まえて、別の基板に影響があった場合に必要な部品を多めに持参することにしました。この時も液体がかかった基板のみを交換しましたが直らず、結果的にこの予備の部品が役に立ち、その場で時間のロスなく解決することができました。
こうした経験もふまえ、修理依頼が来るたびに事前に過去の事例や起こりうるトラブルを調べて、可能な限り準備を整えるようにしています。準備不足で慌てることが少なくなり、経験が成長に結びついていると感じています。
日機装を選んだ決め手は、事業の柱が複数あること
――続いて、菅野さんのご経歴と入社理由を教えてください
菅野:2021年5月に中途入社して、現在は札幌営業所で営業職として働いています。前職では、医薬品の卸売業でMS(※)として、約5年間営業職に従事していました。
医薬品の流通を通じて人々の健康に貢献できる仕事にやりがいを感じていましたが、業界内の競争激化や、常に迅速な判断が求められる緊急性の高い業務に厳しさを感じていて……。キャリアの方向性を考え直し、より安定した環境で成長できるメーカーへの転職を決意しました。
日機装に入社を決めた理由は、他の医療メーカーとは異なり、インダストリアルや航空宇宙など、メディカル以外の事業を複数展開しているからです。このように多角的な経営戦略でバランスを取っている企業は珍しく、事業の持続性に大きな魅力を感じました。
※MS…Marketing Specialistの略。医薬品卸の販売担当者。
医療の最新動向を捉えながら、信頼関係を築く営業職の役割
――札幌営業所での営業職の仕事内容を具体的に教えてください
菅野:現在、北海道内の主に道央地区にある病院やクリニックを対象に、透析装置や関連する消耗品の提案と導入支援を行っています。
私たちの役割は、単に製品を販売するだけではなく、医療現場でのニーズに応じた最適な提案を行い、導入後も安定した運用をサポートすることです。常に最新の医療動向や技術について学び、それをお客さまに共有し、信頼していただける関係を築くことが求められます。
また、定期的な訪問を通じて、お客さまの不安や疑問に迅速に対応し、患者さまが安心して透析治療を続けられる環境を提供することも大切な仕事の一部です。
――仕事のやりがいは、どのような時に感じますか
菅野:お客さまのニーズに寄り添ったご提案をし、お客さまから感謝の言葉をいただけた時に、仕事のやりがいを感じます。
最近では、自作した「透析装置の更新に向けた提案表」を活用し、各施設の旧装置の台数や更新状況を細かく管理しています。この提案表と合わせ、医療業界の最新情報をキャッチアップし、医療機関の経営面も考えた提案をしたところ、お客さまから感謝の言葉を頂けました。透析治療の分野は専門性が高く、必要とされる知識も幅広いのですが、今後もこのようなお客さまに寄り添った提案ができるよう、日々努力して透析装置や制度の知識を深めていきたいと思います。
――日々、工夫されているのですね。他に、お客さまに喜ばれたエピソードがあれば、教えてください
今年の春、病院の技士長からセミナーの共催を依頼されました。初めての経験だったため最初は戸惑いましたが、何度も打ち合わせを重ね、スケジュール管理やオンライン配信の準備、他病院の技士の方々に向けた依頼を担当しました。
無事に技士会が終わった後、技士長から思いがけず「よくやったね、ありがとう」と感謝の言葉をいただきました。本当に嬉しかったですし、この経験を通じて技士長との信頼関係も深まり、今後さらに意義のある提案ができるよう、努力したいと思いました。
――北海道の病院やクリニックを担当する上で、意識していることはありますか
菅野:北海道は特に雪深い地域なので、冬場には物流に影響が出ることも少なくありません。そのため、有事の際に病院や患者さまが困らないよう、消耗品などの在庫状況を常に把握するようにしています。
営業職として大切なのは、どの地域に配属されても、その地域の特性をしっかり理解すること。私は北海道出身ですが、同僚の中には東京出身の方もいます。サービスエンジニア職も営業職も転勤の可能性があるので、今後も柔軟な姿勢で、地域に合ったご提案を行えるよう努めていきたいです。
サポート体制が整った、安心して働ける職場
――お二人とも女性比率が低い職種でご活躍されていますが、社内の雰囲気や働きやすさについて、どのように感じていますか
三島:日機装のサービスエンジニア職の中では、現在私が唯一の女性です。でも、チームのサポートが充実しているので困ったことはありません。
例えば、修理に出向く際に先輩が「大丈夫?」や「この部品を持って行くといいよ」と声をかけてくれるので、安心して業務に取り組めます。質問や相談がしやすく、チーム全員で助け合いながら仕事を進められる環境に助けられています。
菅野:北日本では、私が唯一の女性営業です。そのため、最初は誰に話しかけたらいいのか、相談すべき相手が分からず戸惑うこともありました。しかし、少しずつメンバーの人柄や担当領域が把握できるようになり、自然とコミュニケーションが取れるようになりました。また、同じフロアには女性スタッフもいるため、「女性だから」という理由で困ることは全くありません。
――お昼休憩や休憩時間はどのように過ごしていますか?
三島:社内にいる時は、同僚と一緒に会社の食堂で食事をすることが多いです。お昼になると自然と「一緒に行こう」と声を掛け合い、みんなでランチを楽しんでいます。
菅野:外勤時は、一人で食べることもあれば、同行しているエンジニアの方と一緒に食事をすることも多いです。社内にいる時は、デスクで近くの先輩と談笑しながらお弁当を食べたり、会議室でランチを楽しんだりしています。
医療業界でキャリアを切り開く、2人の女性社員の新しい挑戦
――今後の展望やキャリアについて教えてください。
三島:まだ入社して2年目なので、具体的なキャリアプランはこれからですが、挑戦してみたいことはいくつかあります。それは、日機装唯一の女性サービスエンジニア職として、将来的に結婚や出産といったライフイベントを経ても働きやすい環境を整えること。
例えば、夜間の修理が難しい場合の対応方法などを検討し、柔軟な働き方ができるようになればと思っています。また、女性のサービスエンジニアを増やすために、大学での講義や学会への参加など、より多くの場面で日機装の魅力を発信していきたいです。
菅野:営業職としては、社内に女性のグループリーダーもいらっしゃるので、そうした先輩の姿をモデルケースとしながらキャリアアップを目指したいと思っています。そのために、まずは経験を踏んで、組織の中核を担う社員としての役割を果たせるよう成長していきたいと思っています。
――最後に、医療業界に興味を持っている女性や進路を迷っている方にメッセージをお願いします
三島:メンテナンス作業は体を使う仕事というイメージがあり、挑戦することに不安を感じる女性もいるかもしれません。確かに、10〜20キロの重い部品を扱うこともありますが、だからと言って「できない」わけではありません。
また、サービスエンジニアのような技術職には女性が少ないからこそ、周囲に新鮮に受け止められ、それを強みとして活かせる場面が多くあります。実際に修理に伺うと「女性の担当者は初めて見たよ」「どうしてこの仕事を選んだの?」といった会話が自然に始まります。他にも、病院の先生や技士の方だけなく、患者さまから「女性のメンテナンスさんって、かっこいいね」と、声をかけていただくこともあり、そこから信頼関係が生まれるチャンスにもつながります。機械や技術に興味がある方は、思い切って挑戦してみてください。
菅野:私は医療業界に携わって8年ほどになりますが、透析治療の分野は全くの未経験からスタートしました。機械の構造から臨床知識、市場の動向まで幅広い知識が求められる大変な仕事ですが、その分、大きなやりがいを感じられます。
また、女性のメディカル営業職の数が多くないからこそ、お客さまに「新しい風を感じる」と言っていただけることもあります。医療業界に興味がある方や新しいことに挑戦したい方にとっては、貴重な経験を積める機会だと思います。ぜひ一緒に働きましょう。
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