ものづくり
2026/01/21
座学だけでは得られない実践知を。若手技術者を育てる「デザインコンペ」
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目次
日機装では、若手技術者の育成を目的とした新たな取り組み「デザインコンペ」が開催されました。
「デザインコンペ」は、従来の座学中心の教育とは一線を画し、実際に手を動かしながら設計・開発プロセスを学ぶことを重視した実践的な教育プログラムです。今回は模擬透析装置をテーマに開催され、事業の垣根を越えて選ばれた混成チームは、約半年間にわたり、コンセプト設計からリスク分析といった本格的なプロセスに挑戦。多様な知識や視点を持ち寄りながら、課題解決に取り組みました。
本記事では、デザインコンペの発案者の一人であるメディカル技術センター長の横山さんと、見事優勝を果たしたチームのメンバーにインタビューを実施。デザインコンペ開催の背景や、事業を越えたチームでの学びのプロセスに迫ります。
知識を「使う」経験で、本物の技術者へ
まずは、デザインコンペの発起人の一人であるメディカル技術センター長の横山さんに、開催の経緯や若手技術者育成への思いを伺いました。
| 横山 和巳:メディカル技術センター長。本デザインコンペの発案者。 |
――はじめに、今回の「デザインコンペ」が企画された背景を教えてください。
横山:最大の目的は、若手技術者の教育です。これまで設計の手法などは座学を中心に教えていましたが、やはり一方的に説明を聞くだけでは、現場で通用する実践力までは身につきにくいという課題がありました。
設計のノウハウや勘所は、実際に手を動かし、悩み、工夫して初めて身になるものです。そこで、ただ教わるだけではなく、自分たちで考え、チームで競い合いながらものづくりを体験する「実践的な場」を作ろうと考えたのが始まりです。
横山センター長
――今回、「模擬透析装置」がテーマに選ばれた理由は何だったのでしょうか?
横山:ものづくりの実践で最も大切なのは、若手技術者に「お客様の課題や要求を、自分たちの技術でどう解決し、実現するか」という一連のプロセスを体感してもらうことです。
ただし、いきなり実際のお客さまの課題を取り扱うわけにはいきません。ふさわしい題材を探していたところ、「模擬透析装置」の課題が思い浮かびました。
日機装は、日本医療機器テクノロジー協会の依頼を受けて、小学生向けの「キャリア教育イベント」に協力しています。イベントでは臨床工学技士の仕事の紹介の一環で、血液の代わりに牛乳やオレンジジュースを濾過して透明にする実験装置を使い、透析の仕組みを子どもたちへ分かりやすく伝えています。しかし、この「模擬透析装置」について、実際に使う社員たちから「運搬や準備が大変だ」という声が上がっていたんです。
簡易的な装置とはいえ、設計要素を含むこと、そして何より解決すべき明確な「顧客の課題」があること。これらの条件が揃っていたため、教育の題材として最適だと判断しました。
――参加チームは、異なる事業の若手社員による混成チームだと伺いました。
横山:はい。狙いは大きく2つあります。1つは、多角的な視点を養うこと。日機装にはインダストリアル、航空宇宙、メディカルといった異なる事業があり、それぞれ設計思想やノウハウが異なります。それらを持ち寄ることで、一つの分野で閉じた考え方ではなく、広い視野を養ってほしいと考えました。
もう1つは、「横のつながり」を作ることです。普段の業務では接点のないメンバー同士が、一つのものづくりを通じて苦楽を共にすることで、将来的に事業の垣根を越えた技術交流が生まれる土台となることを期待しています。
――このプログラムを通じて、参加者の成長を感じた瞬間はありましたか?
横山:はじめは手探りでしたが、次第に彼らが自ら「KJ法」などプロセス分析の手法を用いて顧客の要望を分析したり、製品のリスク分析を行ったりと、専門的な設計手法を実践し始めた時には成長を感じましたね。単なる「工作」で終わらせず、顧客視点に立って仕様を決め、安全性を検証するという、実際の設計プロセスをしっかりと踏んでいた点が素晴らしかったと思います
――最終プレゼンテーションでは、どのような点が評価されたのでしょうか?
横山:大きく分けて「プロセス」と「実用性」の2軸で評価しました。
まずプロセスについては、顧客の要望をきちんと仕様に落とし込み、そこからコンセプトを立案するという、ものづくりの基本フローを忠実に実践できているかを見ました。
一方の実用性については、「軽量化」や「準備の簡略化」といった現場からの具体的な要望に対して、そのアイデアがどれだけ応えられているか、という点を重視しました。
ポスタープレゼンテーションの様子
――今後の展望を教えてください。
横山:このコンテスト形式の教育プログラムは、今後もテーマを変えながら継続していく予定です。
また、今回の優勝チームには特典として、アイデアを「試作品として実際に製作する」権利が与えられます。実はこの製作フェーズには、今回惜しくも選ばれなかった他チームのメンバーにも関わってもらおうと考えています。全員で一つのものを作り上げ、「全員で成功体験を共有」できる形を目指したいですね。
そして最終的には、完成した装置が実際の教育現場で活用される日を楽しみにしています。
多様な個性が融合し、新たな価値を創造する
ここからは、見事優勝を果たしたチームの皆さんに話を伺います。インダストリアル、航空宇宙、メディカルと、全く異なるバックグラウンドを持つ5名は、どのようにプロジェクトを進めていったのでしょうか。
| 三浦映人さん:インダストリアル事業本部クライオ設計グループ所属/新卒入社2年目、低温液化ガス用ポンプ(クライオジェニックポンプ)の設計に携わる。 川端日和さん:航空宇宙事業本部製造技術グループ所属/新卒入社3年目、航空機の翼部品やエンジン部品の量産に向けた製造工程の設計に携わる。 渡邊裕介さん:インダストリアル事業本部所属。中途入社2年目、原子力&火力向け装置の機械設計業務に携わる。 太田悠斗さん:メディカル事業本部メディカル技術センター所属/新卒入社2年目、海外向け透析装置の新規開発に携わる。 寺田有梨沙さん:メディカル事業本部メディカル技術センター所属/中途入社2年目、海外向け透析装置の維持改良に携わる。 |
――優勝おめでとうございます。まずは率直な感想をお聞かせください。
三浦:正直、驚きが一番大きかったです。他のチームのアイデアも斬新で優れていたので、自分たちが選ばれるとは思っていませんでした。
川端:私も同じく驚きました。ただ、プレゼン担当の三浦さんと寺田さんの発表がとても分かりやすかったので、そこは強みだと思っていました。
寺田:素直に嬉しかったですね。ただ、優勝チームはその後、実際に製品を作るフェーズに進むことになるので、喜びと同時にプレッシャーも感じました。
(左から)三浦さん、川端さん、寺田さん
――今回提案された装置のコンセプトについて教えてください。
太田:コンセプトは「軽量化とユーザビリティの向上」です。これを分かりやすく伝えるため、「『送ると使うを一つに』統合型透析実験装置」というタイトルをつけました。
寺田:これまでは、装置や部品がバラバラで、会場に送ってから組み立てる作業が大変でした。そこで、一つの箱にすべての機能を集約し、箱を開ければすぐに実験が始められる構造にしました。輸送から準備、使用までの手間と工程を大幅に削減するアイデアです。
(左から)太田さん、渡邉さん
――異なる事業のメンバーが集まる中で、どのように開発を進めたのでしょうか?
川端:私や三浦さん、渡邊さんは普段メディカルの領域に関わっていないので、まずは「透析とは何か?」という基礎知識の習得が必要でした。そこで、メディカル事業本部の太田さんと寺田さんが先生役となって勉強会を開いてくれたんです。
三浦:週に1回は必ず対面で集まるようにしていました。ホワイトボードに書き出したり、実物の装置を触りながら議論したりすることで、認識のズレを防げたのだと思います。
渡邊:新入社員研修で学んだブレーンストーミングの手法を活用して意見を出し合い、まとめられたのも、チーム運営がうまくいった要因の一つだと思います。また、勝敗を競う場ではありますが、それ以上に「良いものを作ろう」「学び合おう」という雰囲気がありましたね。
寺田:そうですね。チーム内に電気系の専門家がいなかったので、ライバルである他チームのメンバーに相談して助けてもらったこともありました。
――開発プロセスの中で、印象に残っているフィードバックや学びはありましたか?
川端:経過報告会の中で受けた、「具体的な数値で示してほしい」という指摘です。当初は「ユーザビリティの向上」という抽象的な表現でしか自分たちの装置のメリットを訴求できていなかったのですが、準備作業を一つひとつ洗い出し、「作業工程を15から10に削減する」と定量的に示したことで、説得力が格段に増したことが印象に残っています。
渡邊:私は普段、発電所向けの設備など大型の機器を扱っていますが、今回は「小学生が手で触る装置」です。自動機とは異なり、人が直接操作する際の安全性や、子供が触れても怪我をしない配慮など、普段とは違う視点でのリスク管理が求められたのが新鮮でした。
寺田:「操作する人」だけでなく、「それを見ている小学生」の視点も忘れてはいけないという指摘もハッとさせられましたね。使いやすさだけでなく、見やすさや分かりやすさというエンドユーザー視点の重要性を再認識しました。

――今回の経験は、皆さんの今後のキャリアにどう活きそうですか?
三浦:普段の業務は既存製品の改良や設計がベースにありますが、今回は「何もないところから生み出す」経験ができました。これまで当たり前だと思っていた既存のやり方に対し、「本当にそれが最適なのか?」と本質を問い直す視点を持てたことは大きな収穫です。
川端:お客様の要求スペックに応えることに加えて、「自分たちのアイデアを自由にプラスして提案する」面白さややりがいを感じました。この能動的な姿勢は、今後の業務でも大切にしていきたいです。
太田:コンセプト立案から最終化まで、開発プロセス全体を一貫して経験できたことで、視野が大きく広がりました。自分の担当業務がプロジェクト全体の中でどういう位置づけなのかを、より深く理解できるようになったと思います。
――今回の優勝特典として、アイデアを実際に製品化できる権利を獲得されました。今後の意気込みをお願いします。
三浦:今回のアイデアは自分たちだけでなく、多くの人とのやり取りから生まれたものなので、責任を持って形にしていきたいです。
川端:これまでは頭の中や紙の上だけにあったアイデアを、実際に自分たちの手で作り上げていく工程が非常に楽しみです。私はもともと手を動かしてモノを作ることが好きなので、せっかくいただいた貴重な機会、しっかりと成果物として残したいですね。
渡邊:実際に作り始めると、新たな課題が次々と出てくるはずです。先輩方に相談しながらそれらを解決し、最終的には小学生に喜んで使ってもらえる製品を作り上げたいですね。
太田:「やってやるぞ!」という気持ちと同時に、責任の重さも感じています。三浦さんの話にもあったように、関わってくれた皆さんに恥じない良いものを作れるよう頑張ります。
寺田:製品化に向けて多くの課題が残っていますが、チームで協力し、一つひとつクリアしながら完成までやり遂げたいです。
――ありがとうございます。それでは最後に、日機装に興味を持つ未来の技術者へ、メッセージをお願いします。
三浦:日機装には、社員が注目され、活躍できる場がしっかりと設けられています。今回のデザインコンペでも、最後に社長から直接質問をいただき、「経営層が若手の活動をしっかり見てくれている」と感じることができました。若手の挑戦が歓迎される環境は、日機装の大きな魅力だと思います。
渡邊:今回のデザインコンペを通じて、他部署の製品を知り、自分の知識を活かして新しい価値を生み出すという貴重な体験ができました。日機装はこうした経験の場や学びの機会を提供し、若手の成長を後押ししてくれる会社なので、自分の知識を試したい、広げたいという方にはぴったりだと思います。
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