日機装の文化

2024/03/19

“日機装技術研究所”で事業の垣根を超えた研究・技術開発に取り組み、イノベーション創出に挑戦

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“日機装技術研究所”で事業の垣根を超えた研究・技術開発に取り組み、イノベーション創出に挑戦

目次

2023年1月、日機装が手がける各事業の研究開発機能を集約した「日機装技術研究所」が設立されました。

ここでは、日機装の技術力を深化させイノベーションを創出することを目指しています。コンセプトは、「交流」「育成」「発信」の3つの柱のスパイラルアップ。これを体現するべく、各事業における技術的成果を発表して共有する「技術フェスタ」をはじめ、さまざまな取り組みを行っています。

今回は、技術フェスタ開催の裏側や設立から1年が経った日機装技術研究所の現在地や目指す姿について、若手主体で構成する実行委の幹部として技術フェスタをまとめた佐藤氏、坂本氏、2人のサポートに回った横山氏、そして所長として研究所を率いる木下氏の4名に聞きました。

佐藤 佑樹:2019年に新卒入社。メディカル事業本部 メディカル技術センター 装置開発部第一グループに所属し、透析装置の設計開発を手がける。2023年の技術フェスタでは実行委員長を務めた。

坂本 有紀枝:2022年に新卒入社。メディカル事業本部 メディカル技術センター装置技術部第三グループに所属し、透析装置に関わるソフトの開発設計に携わる。技術フェスタでは副委員長を務めた。

横山 和巳:メディカル技術センター長。日機装技術研究所におけるメディカル部門のトップとして、技術フェスタでは若手委員たちを支援した。

木下 良彦:取締役執行役員 日機装技術研究所長、品質保証担当。所長として人と技術を育み、技術フェスタなど研究成果を発信する活動を支援している。


※所属・肩書は取材時点のものです

技術者どうしの交流を生む「技術フェスタ」

当日が楽しみになる、たくさんの交流が生まれる、 “お祭り” に

インタビューに答える佐藤氏、坂本氏写真左から、佐藤、坂本


――「交流」「育成」「発信」のスパイラルアップを実現するための取り組みの一つとして、「技術フェスタ」が初めて開催されたと伺いました。どのようなイベントなのでしょうか。


佐藤:各事業の技術部で、1年間の技術的な成果について発表し合うイベントです。例年は研究発表の場として「技術発表会」という形で実施されてきましたが、今回はよりフランクに成果を共有し合い、技術者どうしが交流できる “お祭り” を目指して「技術フェスタ」として開催しました。 


横山:技術発表会はやや硬いイメージのイベントでしたから、これをいい意味で崩して、皆さんが参加しやすく他の事業について理解しやすいものにしたいなと。そして皆さんに当日を楽しみにしてもらえるようなイベントにしたいと思い、 “お祭り” としての開催を提案したのです。


今後の日機装の成長を見据えて、若手のフレッシュな意見や牽引力に期待しようと、佐藤さんに実行委員長を、坂本さんに副委員長をお願いして、取り組みがスタートしていきました。

――「技術フェスタ」開催の狙いとして、どのようなゴールを描かれていましたか?


佐藤:これまで異なる拠点で活動していましたし、取り組む事業内容もそれぞれ大きく異なりますから、技術部間の “壁” のようなものを感じていて。この技術フェスタの開催を通じて、事業の垣根を超えて交流を生むことで、この壁を薄くすること、取り払うことを目指して取り組みました。


――そんな積極的な交流を生むために、「技術フェスタ」ではどんな工夫をされたのでしょうか。


佐藤:例年の発表形式は口頭で発表する「オーラル発表」のみでしたが、今回は皆さんの参加を促すために「ポスター発表」形式も取り入れました。


また “取り組む内容は違えど、目指すものは同じ” ことを実感してもらうため、そして他の技術部の取り組みからイマジネーションを働かせてもらうために、いくつかの共通テーマを設けて各事業の発表を振り分け、一つのテーマのもとでさまざまな事業の発表が聞ける形にしました。


他にも、発表後に共通テーマごとの「総合討論」の場を設けて意見交換を行うなど、技術フェスタを “交流を通じて思いや気づきを共有し合う場” にする工夫ができたと思います。


坂本:また当日の様子をオンラインで配信したり、ポスター発表に用いた資料(デジタルポスター)を他の拠点にいる製造部門やマーケティング部門の皆さんにも見ていただいたりと、より多くの方にこの技術フェスタを共有するための工夫も行いました。

“交流”のためのさまざまな工夫によって、発表者数は例年の倍以上に

――「技術フェスタ」当日の様子はいかがでしたか?


坂本:今回初めて取り入れたポスター発表では、質疑応答から話が弾んでいた様子が窺えました。異なる事業部の技術者どうしの交流が生まれていることを実感でき、とてもよかったです。

技術フェスタの様子各事業の技術的成果を発表し合った技術フェスタ


佐藤:「この技術では、こういうこともできるの?」と話が盛り上がっていましたよね。質疑応答後も同じテーマに興味をもった方どうしで議論されている様子もあり、よい雰囲気だと思いました。


もちろん、まだ硬さが残る部分もあり、交流の場や“お祭り” にしていくために、できることはまだまだありそうですが、今回の工夫や狙いが一部形になった手応えを感じています。


――開催準備から当日までを振り返って、皆さんの率直な感想を教えてください。


坂本:イベントの方向性やテーマの設定、交流を促す仕掛けづくりなど難しいことは多々ありましたが、オフライン・オンラインを問わず多くの方がイベントに関わってくださったことを、とても嬉しく思っています。私自身も他の事業部の方々と交流を深めることができて、開催してよかったと率直に感じます。


技術フェスタにて発表を行う様子「ポスター発表」では、事業部の垣根を超えて意見が飛び交った


佐藤:皆さんが参加しやすく、たくさんの交流が生まれるイベントになるように、考えるべきことがたくさんあって準備は大変でしたよね。ですが、その結果として発表者数が例年の倍以上にのぼるほど、たくさんの方が手を挙げてくださったことがとても嬉しかったです。


またイベント後の懇親会では「例年に比べてここがよかった」とお声をいただき、やりがいを感じました。もちろん改善点も挙がり、自分としても反省する部分はありますが、まずは最後までやり遂げられてよかったと思います。


横山:社外役員の方が興味を持って参加してくださったことからも、広く皆さんが気軽に参加できる “お祭り” と言えるイベントになったと感じています。


横山センター長


準備期間が短かったにも関わらず成功できたのは、佐藤さん、坂本さんを中心に実行委員の皆さんがしっかりとやりきってくれたお陰です。もちろん私も全力で臨むので、来年も一緒により良い一日を作っていきましょう。

日機装の研究・技術開発の新拠点「日機装技術研究所」

お客様の期待に応え続けるために、事業の垣根を超えた技術開発を

――「技術フェスタ」という新たな取り組みがスタートした背景に、日機装技術研究所の設立があると伺いました。どのような拠点なのでしょうか。


木下:日機装技術研究所は、日機装が手がける各事業(インダストリアル事業・航空宇宙事業・メディカル事業)の技術開発を司る組織を集約し、横断的に統括する研究開発拠点です。


およそ400名の技術者が東京都東村山市の日機装技術研究所に集まり、ここで製品の研究/改良開発や製品設計、品質保証などに取り組んでいます。


木下所長


――どのような経緯で日機装技術研究所が誕生したのでしょうか。


木下:さまざまな環境の変容に適応し、お客様からの期待に応え続けるためには、これまで培ってきた技術に固執することなく開発に取り組み、新たな土台を築き上げていかなければなりません。


そこで、これまでの “改良・改変”というレベルを脱して 、さらに高い次元にある「イノベーション を創出する」という意識で開発や設計に取り組める拠点を持つべきだと考え、事業の垣根を超えて研究・技術開発を行う場として日機装技術研究所を設立しました。

交流・育成・発信のスパイラルアップでイノベーションを生み出す

――日機装技術研究所をどのような拠点にしていきたいと考えていますか?新拠点としてのビジョンやコンセプトがあれば教えてください。


木下:日機装の中期経営計画で掲げた長期ビジョン「Manufacturing Transformer ものづくりで、社会の進化を支え続ける日機装」の実現に向けて、日機装技術研究所は「100年先の社会を支える “なくてはならない” を創出する」拠点となることを目指しています。

そして、それを実現するためのコンセプトとして掲げているのが、「交流」「育成」「発信」の3つの柱です。


積極的に交流しながら研究開発に取り組むことで人や技術を育み、その研究の成果を社内外に発信する。発信をきっかけとして新たな交流を生み、また発信に対して得られたフィードバックをもとに人や技術をさらに育んでいく……そんなスパイラルを回していくことで、イノベーションを生み出したいと思っています。


実は私自身、もともと取締役という立場で各事業の活動を俯瞰してきましたが、「どのような製品をもち、どのようなお客様にどのような価値をお届けしているのか」を確かな実感を伴って理解できたのは、この研究所に来てからなのです。


ここで得た新たな視点で見てみると「この技術はあの事業にも使えるのではないか」「この技術を応用すれば日機装の生産はもっと良くなるのでは」とさまざまな考えが浮かび、きっと素晴らしいイノベーションが生み出せるはずだと期待が膨らんでいます。

既存のやり方に囚われず、挑戦を続ける

技術研究所を起点に、さまざまな可能性やアイデアが生まれている

――日機装技術研究所が発足して1年が経ちますが、イノベーションやシナジーが生まれる場として機能し始めている手応えはありますか。


木下:ある技術部の持つノウハウを展開することで新しいものを生み出す、ある技術部単独では思いつかなかったような技術開発に向けて一歩踏み出せる……そんな可能性やアイデアは多数生まれ始めています。


中には、航空宇宙事業が扱いを得意とするCFRP(炭素繊維強化プラスチック)をインダストリアル事業で扱う機械に用いるための開発を行ったり、日機装技術研究所に在籍するコンピュータシミュレーションを専門とする技術者とのタッグによって、設計業務における綿密なシミュレーションができるようになったりと、具体的な取り組みとして形になってきたものも。まだ道半ばではありますが、今後さらにシナジーが生まれていくだろうと考えています。


日機装技術研究所外観


横山:技術者も、研究設備も、一つの拠点に集まっているというのが大きいですよね。5分ほど歩けば自分たちの技術を他の技術部で試してもらえたり、相手の技術を経験させてもらうこともできたりと、非常にやりやすさを感じています。知恵や技術を交換し合う取り組みは今後自然に、そして着実に増え、効果を発揮していくはずです。

互いに頼り合い、失敗を恐れず挑戦できる研究所を目指して

談笑する木下氏、横山氏、佐藤氏、坂本氏


――ありがとうございます。それでは最後に、皆さんの今後に向けた思いをお聞かせください。


木下:さまざまな領域のプロフェッショナルであるお客さまの高い要求に応えるには、高い技術力を持つことはもちろん、世の中の変容に取り残されないよう、スピーディに製品をお届けしていかなければなりません。


お客さまに求められて一から開発を行うのではなく、多様な技術の “引き出し” を持ち、求めに応じてその中から適したものを取り出して製品設計をかけていくこと、そして然るべきタイミングで高品質なものをご提供していくことが重要になるでしょう。


日機装技術研究所を、そういった技術の “引き出し” をたくさん持つ盤石な技術部門をつくり、事業の基盤となる技術力を深化させるような拠点にしていきたいと考えています。


またその過程においては、技術者の皆さんにワクワクして楽しんでいただくことが大切だと思うので、そういった働く魅力を感じられる環境をご提供していくことも、この技術研究所の使命として取り組んでいきたいですね。


横山:すぐに相談できる距離にさまざまな分野の専門家が集まっていますから、技術者の皆さんには、ぜひお互いに頼り合いながら安心して働いてもらいたいですね。環境に対する安心感や満足感が、仕事を楽しむ余裕ややりがいにも繋がっていくと思うので。


木下:研究開発や技術開発に失敗はつきものですから、失敗できる研究所をつくっていきたいなと。失敗を恐れず挑戦できること、失敗から学んで失敗しなくなっていくことが、イノベーションに繋がっていくと思いますし、お二人をはじめとした若手の皆さんを中心にそれを実現していけるはずだと期待しています。


佐藤:お二人のお話を聞いて、技術フェスタを「困ったときは互いに相談していい」「他の技術部の課題を自分ごと捉えて助け合う」「失敗してもいい」といったさまざまな意味で、皆さんのマインドを変えるきっかけにしていきたいと感じました。最終的にはこのイベントがなくともお互いが何をしているのかを理解し合い、交流し合える状態になれば嬉しいですね。


そのためにも、まずは今回の成功に満足せず取り組みを継続させるべく、一技術者として自分から行動し、それを周りの技術者に広めていければと思います。


坂本:技術フェスタをはじめとしたさまざまな交流の場をきっかけとして、事業部間の壁がどんどん薄くなり、取り払われるのが理想です。私自身ももっとそういった場に積極的に参加し、横・縦の繋がりを増やしていきたいと思います。


木下:若手の皆さんがそういった活動に前向きに取り組めるように、マネジメント層の技術経営思考を深めていくことも重要になりそうですね。やはり交流・育成・発信のスパイラルアップが大事な鍵になると改めて感じました。