日機装の文化
2025/09/10
【Bright3周年】時を経て見えてきた、新たな景色。Brightに登場した4人の現在地とは
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目次
2025年7月に、開設3周年を迎えた日機装のオウンドメディア「Bright」。今回は、2022年〜2023年に登場した社員の「いま」を追いかけるため、4人の社員に再び話を伺いました。
前回の取材から約3年。彼らはこの時間の中で、どのような変化を経験したのでしょうか?4人それぞれの歩み、仕事への思い、そして未来への展望をお届けします。
CFRP開発で拓く、サステナブルな空の移動(小栗さん)

前回の取材時から変わったこと
2022年7月のBright開設時、1番目の記事に登場し、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の解説をした小栗さん。現在も引き続きCFRPの技術開発を行っています。ただ、同じCFRPの航空機部品開発を続ける中でも、市場環境の変化により求められるポイントは変わってきていると言います。
小栗:国際民間航空機関(ICAO)が採択した「2050年までに国際航空からのCO2排出量を実質ゼロにする」という目標を背景に、「環境配慮」がより重視されるようになりました。従来の“生産性向上”というミッションに加え、「航空機をいかにサステナブルに作るか」という視点が、開発の前提となっています。
小栗さん
現在の取り組み
市場の要求に応えるため、現在は二つの大きな技術開発に取り組んでいます。
一つ目は、CFRPリサイクル材料を使った航空機部品の開発です。
航空機向けCFRPは優れた強度や耐久性などを求められるがゆえにリサイクルが困難で、多くが埋め立て処分されてきましたが、近年は環境配慮の観点から航空業界でも再資源化が求められています。これに対し日機装では、航空機部品メーカーとしての長年の知見を活かし、リサイクル材料を用いた航空機部品の開発に取り組んでいます。つまり、航空機から航空機へと素材を循環させる、高難易度な技術開発への挑戦です。現在は、さまざまなサプライヤーや研究機関と協力しながら、実用化に向けた検証を進めています。
二つ目は、生産性と品質を両立する新しい製法の開発です。
従来の製法には時間がかかるという課題がありました。そこで、繊維や樹脂といった材料の扱い方から見直し、成形時間の大幅な短縮と、より高品質な部品製造を可能にする新しいアプローチを模索しています。小栗さんは、この各分野のサプライヤーと知見を出し合い、一つのものを創り上げていく過程に面白さを感じているそうです。
今後の展望
小栗:部品メーカーの技術者として、お客さまに使っていただき、喜んでもらえる製品に繋がる研究開発を続けたいと考えています。会社として力を入れている宇宙分野にも、自分たちの技術の適用範囲を広げていきたいです。
チームを率いるリーダーへ。新たな視点が拓く、医療機器の未来(片山さん)

前回の取材時から変わったこと
2022年8月、Brightに登場した片山さん。当時の記事では、自身のキャリアや、透析関連装置のソフトウェア開発にかける思いを語ってくれました。あれから約3年が経ち、その環境や役割に大きな変化が訪れていると言います。
片山: 以前は自ら手を動かすエンジニアとしての業務が中心でしたが、現在は係長になり、マネジメントの比重が増えました。チームでものづくりをするという意識がより強くなり、どうすればメンバーが気持ちよく、質の高いアウトプットを出せるかを常に考えるようになりました。
また、開発拠点が静岡から東村山へ移転したことも、片山さんにとっては大きな変化でした。
片山: 海外からのお客さまなど、社外の方と直接顔を合わせて話す機会が増えました。いろいろな人と交流しやすくなったことで、より詳細な情報が得られたり、社外の方を巻き込んで動きやすくなったりと、多くのメリットを感じています。
片山さん
現在の取り組み
現在はアメリカ市場向けのソフトウェア開発に注力し、日本とは異なる規格への対応に挑戦しているという片山さん。中でも「サイバーセキュリティ」は、安全性・信頼性を支える要素として積極的に取り組んでいます。
この約3年間での役割や開発環境の変化を通じて、以前から抱いていた「自らの専門性と技術的視点を起点に、新たな価値を創出する開発スタイル」への思いが、より一層強まっていると言います。
片山: 医療機器のセキュリティは、直接的に見えにくい分野ですが、患者さんを守る上で重要な要素です。社外の方と協力しやすくなった今の環境を活かし、多様な視点を得ながら日機装として本当に良いものを世界に届けていくことが、今の私にとっての挑戦だと考えています。
今後の展望
チームを率いる立場として、そして一人の技術者として。片山さんは二つの視点から未来を見据えています。
片山:今まで以上に、医療機器の進化・発展に貢献するため、志を同じくする仲間を増やし、より大きなチームでのものづくりに挑戦したいです。将来的には、透析治療に伴う生活の制約を和らげたり、治療効果や体調の変化を「見える化」したりして、患者さんがより前向きに日々を過ごせる製品を生み出していきたいです。
進化するロボット制御、自動化への挑戦(岩﨑さん)

前回の取材時から変わったこと
2022年11月、電子部品「MLCC」の製造に不可欠な「温水ラミネーター」について、その仕組みや開発の歴史を解説した岩﨑さん。現在は所属部署や役割が変わり、手がける技術領域もさらに広がりました。
岩﨑:開発グループから設計部門へ移り、係長に昇進しました。これまでは自身の担当装置に関する業務が中心でしたが、いまはチーム全体の電気設計にも目を配るようになりました。また、市場では省人化・自動化のニーズがさらに高まり、3年前は緒に就いたばかりだった多関節ロボットの制御が、いまや当たり前の業務になっています。こうして、世の中で注目されているロボット技術に仕事として関われることは面白いですし、やりがいを感じますね。
岩﨑さん
現在の取り組み
パワー半導体への関心が高まる中、日機装はパワー半導体モジュールの接合工程を担うシンタリング装置「3Dシンター」に力を入れ、お客さまのご要望に合わせた高機能化・自動化など開発を進めています。さらに、従来の「温水ラミネーター」についても前後工程の自動化に対応するなど、ロボット制御技術を活かした装置開発を積極的に行っています。

ロボットを使用した装置は、これまで人の手で行われていた作業をロボットに代替させるものがほとんどです。人の作業は単純に見えても非常に繊細な部分があり、それを再現するためには、多くの課題が伴ったと言います。
岩﨑:例えば温水ラミネーターや3Dシンターの前後装置でシート状の部材を搬送する際、「1枚部材を取って別の場所に置く」という作業は人間にとって簡単なことですが、「部材が少し変形していたら」「2枚くっついていたら」などの制限があると、途端にロボットにとっては難しい作業となってしまいます。そのため、新たな機構を追加したり、細かい動作を追加させたりと何度も試行を重ねながら、人の技をロボット化する作業に取り組みました。こうした自動化の技術・経験は、“自動で細胞の培地を交換する装置”などの新領域の開発にも活かされています。このように、半導体やバイオなど分野を問わず貢献できる自社の技術力には確かな手応えを感じています。
今後の展望
岩﨑さんの原動力は、いまも昔も変わらず純粋な技術者としての探究心です。
岩﨑:新しい機器を取り入れたり、未知の分野に挑んだり、これからも積極的に新しい技術に挑戦したいと思っています。チームのメンバーが互いに知識を共有し、高め合えるような環境を作っていきたいですね。
活躍の舞台はアメリカへ。目指すは、世界で通用するゼネラリスト(坂さん)

前回の取材時から変わったこと
新卒入社組として活躍する社員へインタビューする連載企画。第1回目となる2023年7月の記事に登場した坂さんは、当時、クライオジェニックポンプの設計という仕事のやりがいや、今後の目標を語りました。
その取材からわずか2ヶ月後、坂さんはラスベガスにあるグループ会社への出向を決断。入社前からの希望だった海外勤務のチャンスを掴みます。
坂:アメリカの拠点では、お客さまからの引き合いやご相談が増えたことに伴い、そのご要望に基づいて見積もり段階の設計を行う新たなエンジニアを求めていました。もともと海外で働きたいという思いはあったので、上司から声をかけてもらった翌日には「行きます」と返事をしました。
坂さん
現在の取り組み
現在は、アプリケーションエンジニアとして見積もり段階での設計を担当し、最近では世界初となる脱炭素関連の案件にも関わるなど、活躍の幅をますます広げている坂さん。アメリカでの日本とは異なる仕事の進め方に、大きな刺激を受けていると語ります。
坂: 日本では丁寧な合意形成が重視されますが、アメリカでは、プロジェクトを前に進めながら適宜修正を加えていく、スピード感や柔軟性が求められます。この仕事の進め方の違いは自分にとって刺激的で、成長にもつながっていると感じています。
アメリカで坂さんの大きな武器となっているのが、過去のプラントエンジニアリング会社への出向経験です。顧客の立場を理解しているからこそ、要所を押さえた提案ができると言い、早速大きな成果に繋がりました。
坂:渡米後すぐに、大型の案件を受注することができました。自分の仕事に対して「Good job!」とストレートに評価してもらえる文化はとても新鮮で、それがモチベーションにもなっています。
こうした職場での良い関係はプライベートにも広がっており、同僚と旅行に出かけることもあるそう。公私共に充実していることが、海外生活の楽しさの源泉となっているようです。
また、さまざまな立場で設計業務に携わった経験から、坂さん自身のキャリア観にも変化が生まれました。
坂:複数の関係者と連携しながらプロジェクト全体を前に進める「ゼネラリスト」としての役割に、より自身の強みを感じています。
今後の展望
自身の強みを「ゼネラリスト」にあると確信した坂さんは、次のキャリアとして明確な目標を見据えています。
坂: これまでのさまざまな経験を土台に、今後はプロジェクトマネジメントに挑戦したいと考えています。プロジェクト全体を俯瞰し、推進していく力をさらに磨き、グローバルな環境で通用する技術力、判断力とコミュニケーション能力を身につけ、社内外から信頼されるエンジニアになるのが目標です。
それぞれの場所で、挑戦は続く
前回の取材から数年が経ち、4人の働く環境や担う役割にはそれぞれ変化がありました。サステナブルな未来のため、新しい技術や製法に挑む人。マネジメントという新たな役割を得た人。新たな技術領域へと挑戦の幅を広げた人。活躍の舞台をアメリカに移した人。
そのストーリーからは共通して、変化を恐れず新たな挑戦に向き合う姿勢と、技術者としての変わらぬ探究心が伝わってきました。
一人ひとりの挑戦は、やがて世界をより良くしていく力になる―――Brightはこれからも、日機装で社会を支える「人」の姿を追いかけていきます。
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