日機装の文化

2024/08/21

情報の一元化で業務効率アップ!若手社員のアイデア「社内Wiki」

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情報の一元化で業務効率アップ!若手社員のアイデア「社内Wiki」

目次

「チューブやケーブルを3Ⅾ設計するには?」「外装部品に求められる要求事項は?」「業務システムの利用方法は?」――。血液透析装置などを開発しているメディカル技術センターは、長年積み上げてきた多種多様な情報やノウハウの上に成り立っています。しかし、その情報は属人化していたり、社内フォルダに散在していたりして、たどり着くまでに一苦労。時間が掛かってしまうという課題がありました。

「日機装版の百科事典があったら良いのに…」。誰もが頭を悩ませてきた問題を解決しようと、立ち上がったのは若手社員たち。ソフトウェア開発の経験などを生かして、誰でも情報を登録できる情報一元化ツール「社内Wiki※」を作成しました。今回は、そんな社内Wikiの立ち上げに携わった3名にインタビュー。発案者の小畠氏と、共同開発者の本間氏、冨成氏に、開発の背景や想いを伺いました。

※Wiki: 不特定多数のユーザーが共同して、ウェブブラウザから直接コンテンツを編集するシステムの総称

小畠 悠:2021年に新卒入社。メディカル事業本部 メディカル技術センター 装置開発部に所属し、透析装置に搭載するセンサーの開発に従事。

本間 拓実:2014年に新卒入社。メディカル事業本部 メディカル技術センター 装置開発部に所属し、海外向け透析装置の機械設計および開発を担う。

冨成 直紀:2021年に新卒入社。メディカル事業本部 メディカル技術センター 装置技術部に所属し、国内外の透析装置の改良設計を担う。

※所属・肩書は取材時点のものです

「社内Wiki」は日機装版のインターネット百科事典

――社内Wikiとはどのようなものなのでしょうか?

小畠:社内Wikiは、いわば日機装版のインターネット百科事典です。これまでは業務に必要な情報が社内のさまざまな場所に散在していて、「どこを探したら知りたい情報が見つかるのか分からない」という状況でした。

冨成:特に入社したばかりの頃は、勤怠管理システムやソフトウェアの操作方法など、細々とした情報を見つけるのが大変だった記憶があります。

小畠:そういった情報収集への課題感から、情報を一箇所にまとめる箱=社内Wikiの作成に踏み切りました。

――社内Wikiの作成が始まるまでの経緯を教えてください。

小畠:社内Wikiの開発がスタートしたのは、私が入社した2021年のことです。でも実はそれ以前に、本間さんや先輩社員のみなさんが情報収集の効率化に向けて動き始めていました。

本間:ちょうどその頃は、ベテラン技術者の退職などでメンバーの顔ぶれが変わるタイミングでした。属人化していた知識やノウハウのデータベース化が急務だったため、馴染みのあったエクセルや既存のプラットフォームを活用して試行錯誤を続けていましたが、情報量が増えてファイルが重くなったり、動作が遅くなってしまったりして……。そんなとき、グループの新しいメンバーとして、小畠さんと冨成さんが入社されたんです。

小畠:本間さんから当時の状況を伺い、すぐに「私にやらせてください」と手を挙げました。学生時代のアルバイトでソフトウェア開発の経験があったので、力になれると感じたんです。

テンプレート導入で「社内Wiki」を誰にでも使いやすく

――社内Wikiはどのようにして作られていったのでしょうか。

小畠:はじめに社内Wikiの基盤となるサービスの選定から着手し、無料で多くの機能を利用できる「GROWI」というオープンソースを採用しました。そして、情報の移行を効率的に行えるよう、GROWIが提供するAPIを介して、Wordなどの文書データを自動で取り込むアプリも作成しました。

本間:ただ、GROWIはmarkdownという文書を書くための言語(記法)で情報を登録する必要があるため、「システムに不慣れな社員にとっては難しく感じるかもしれない」という懸念がありました。

冨成:そこで考えたのが、テンプレートの提供です。私はソフトウェアにあまり触れてこなかったので、同程度のリテラシーレベルの社員でも使いやすいツールとなるよう、社内Wikiの改善策を検討していきました。

GROWIに登録する情報は一つの記事として公開されるのですが、その記事にはタイトルや見出しが必要で、大きな見出しを作る際は、例えば「##透析」、小さな見出しを作る際は「###血液ポンプ」を……といったように、指定された文字列(#)を入力しなければいけません。

しかし、情報を登録する社員が毎回「##」や「###」を手作業で入力するのは手間がかかるので、すでに記載されたテンプレートを用意して「あとは文章を入れるだけ」という状態を作りました。

ほかにも、社内Wikiの説明書やアカウント登録方法のマニュアル、チュートリアル動画も用意しました。こうした工夫によって、私と同じようにソフトウェアに不慣れで、「分からない」「面倒だ」と利用を避ける人のハードルを下げられたと思います。

――社内Wikiには、どのような情報が掲載されているのでしょうか?

本間:各自が業務で得たノウハウがメインです。また、資材調達や社内の就業システムに関する情報も掲載されています。ただ、品質保証に関する情報は、別途QMS情報管理システムで管理しています。

このQMS情報管理システムは管理が厳密なため、新たに情報を掲載するための起案や審査にかなりの時間を要します。医療機器の製造開発という命に関わる業務にあたるうえで欠かせない仕組みですが、社内Wikiのコンセプトは「誰もが気軽に探せる・載せられる」こと。「誰かが必要かもしれないから、この情報も載せておこう」と思ったときにサクッと更新できるような、社員にとって身近なツールを目指しています。忙しさを理由に、埋もれ、失われてしまう情報をきちんとキャッチしていきたいんです。

小畠:「守るべきこと」が記載されているQMS情報管理システムと、「一つひとつの業務のノウハウ」が記載されている社内Wikiとで、棲み分けができていると感じています。これまでQMS情報管理システムには載らないような細々とした情報を受け止める器が無かったのですが、今では社内Wikiがその役割を果たしているのではないでしょうか。

――現在、社内Wikiはメディカル技術センター内で活用されています。4名でスタートしたプロジェクトを、どのようにして広めていったのでしょうか。

小畠:はじめは自分たちのチームメンバーに展開し、フィードバックと改善を繰り返しながら、30人、50人と利用者の範囲を広げていきました。

本間:チュートリアルの作成時には新入社員に意見を募るなど、誰にとっても使いやすいツールを目指し、ブラッシュアップを重ねたうえでセンター内へ展開しました。

――周囲の社内Wikiに対する反応はいかがですか?

小畠:私の周りで「この情報、社内Wikiに書いてあったよね」「これは社内Wikiに登録した方がいいんじゃない?」といった声が聞こえるようになってきたり、動画の掲載方法について相談を受けたりと、利用の輪が広がっていることを実感しています。

本間:私自身も業務で社内Wikiを意識する機会が増えました。小さな情報でも必要だと思えば積極的に登録しますし、周囲にも「そのノウハウは社内Wikiに入れておいて」と声をかけるようにしています。

また、社内Wikiの存在はメディカル技術センターだけでなく、全社にも広まっているようです。以前、航空宇宙事業の社員から「情報集約の方法を模索しているので、社内Wikiについて詳しく教えてほしい」と話があり、部署を跨いで良さを感じてもらえていることに喜びを感じています。

冨成:実際に情報収集にかかる工数が削減されたという声も挙がっており、社内Wikiのアクセス数から換算すると、メディカル技術センター全体で250万円以上の削減効果が見積もられています。今後さらにアクセス数が増えれば、より一層の効果が見込まれるのではないでしょうか。

本間:製品の開発においても、メリットがあると感じています。例えば、設計段階で試験に臨むにあたり、社内Wikiで過去の試験で起きたトラブル(過去トラ)を調べることができます。そこに、対応策など書かれているので、同じ失敗を繰り返すことなく、効率良く開発を進められるのです。

情報管理のDX化を実現した「社内Wiki」。将来的には全社的なデータベースへ

――「社内Wiki」の取り組みは、数十年ぶりに社内表彰制度「改善提案」の金賞に選ばれたと伺いました。受賞が決まったときの感想を教えてください。

小畠:歴史ある賞を受賞できて嬉しいです。金賞をいただいたことで社内Wikiがさらに広まるといいなと思います。

小畠:最初こそ反対されるかと思っていましたが、自由にやらせてくれて有り難かったです。また、サーバーの立ち上げ時にはグローバル情報統括部(※)の皆様に力を貸してもらうなど、今回の金賞は多くの人の理解と協力があってこそ実現したものだと思います。

冨成:私は、達成したことのスケールの大きさに驚いています。「情報収集が効率化できるといいな」といった小さな思いが、センター全体から必要とされるようになり、さらには金賞という名誉ある賞を頂くことができました。自分たちの頑張りをきちんと見て、評価してくれる人がいることはやっぱり嬉しいですね。

本間:今回の受賞は、後輩のメンバーが頑張ってくれたおかげだと思います。私はサポートに回る場面が多かったので、率直に「みんなおめでとう」と伝えたい。忙しい業務の中で最後まで諦めずによくやり抜いてくれました。お祝いに「みんなで焼肉食べに行こう」と話していたところです。

※グローバル情報統括部:日機装の情報システムを管理する部門

――最後に、社内Wikiの今後の展望やありたい姿を教えてください。

本間:多くの人に使ってもらえたらと立ち上げたツールなので、他部署にも広げて、全社的なデータベースにできたらいいですね。

小畠:将来的には、社内WikiとAIを組み合わせて、質問に対する回答が自動で返ってくるような仕組み作りに挑戦するのも面白そうですよね。検索がより楽になり、短時間で求めている情報にアクセスできるようになるかもしれません。

ただ、私たちだけで社内Wikiを管理し続けるのは現実的ではないので、体制作りや仕組み化にも尽力していきたいです。社内Wikiがより長く、広く活用されるために、これからも改善を続けていきたいと思います。


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