くらしを豊かに
2023/11/01
飛行機はどうやって止まる?~減速に不可欠な部品「カスケード」の秘密~
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目次
猛スピードで滑走路に降り立った飛行機がどうやって止まるのか、みなさんご存じですか?自動車よりも大きく、スピードの速い飛行機には独自のブレーキシステムがあります。今回は、飛行機が着陸するときの仕組みや、安全な減速を実現するための部品について詳しく解説します。
着陸時に飛行機を減速させているのは3つのブレーキ
例えば、200トンを超えるボーイング777型機の場合は、時速250kmという高速な状態で着陸します。これをわずか2キロという短距離で停止させるために、3つのブレーキシステムを使っています。翼の抵抗力、車輪のブレーキ、そしてエンジンの逆噴射です。
- 翼の抵抗力
地面に降り立ってまず働くのが、翼の後部に取り付けられたスポイラーという板です。着陸すると同時に自動的にせり上がり、主翼の上面に流れる空気の流れを妨げて、空気抵抗を高めます。さらに、飛行機が浮かぶ力を減少させることで、タイヤを地面に押し付けて、車輪の摩擦力を高める効果もあります。
- 車輪のブレーキ
もちろん車やバイクなどと同様、飛行機にも車輪のブレーキがあります。飛行機の車輪は胴体や主翼の下に備わっていますが、ブレーキはタイヤの中心部に設置されています。仕組みも車やバイクと似ています。操縦席でブレーキペダルを踏むと、車輪や車軸に取り付けられたディスクがまとめて押し付けられ、摩擦が生じて止まる力になります。
- エンジンの逆噴射
そして、実は空を飛ぶためのジェットエンジンも、減速のために活用します。飛行中には前から後ろに噴射しているエンジンの気流を、着陸時には逆方向に噴き出すことで制動力を生み出します。滑走路に降り立ち、「ゴゥー」とエンジン音が一段と大きな音を立てているときに、この動作が行われています。
逆噴射で活躍する「カスケード」
減速に大きな役割を果たすエンジン逆噴射には、湾曲した格子状の部品「カスケード」と板状の部品「ブロッカードア」が活躍しています。どちらも日機装が製造を手掛ける部品です。どのように作動しているかを理解するために、まず逆噴射の仕組みについて解説します。その仕組みは意外にシンプルです。
周囲を円筒状のカバーが覆うジェットエンジン。飛行中は、前方から吸い込んだ空気を後方に勢いよく排出しています。着陸時にはカバーの一部が開くとともに、ブロッカードアが筒の中に張り出して後ろ向きの気流をブロック。せき止められた空気は、開いたカバーの隙間から前方へと噴き出します。このとき、気流を制御するのがカスケードの役目です。
飛行機が着陸するとき、逆噴射装置を使用した場合と使用しなかった場合で着陸距離に約500mもの差が生じます。カスケードは安全に着陸するために、必要不可欠な製品なのです。
世界シェア90%を超える日機装製
日機装は、1983年に世界で初めて炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製のカスケードを開発しました。CFRPには「軽くて強い」という特徴があります。この特徴は、航空機部品の素材として好都合です。強度を保ちながら軽量化できるため、燃費の向上によるコスト削減や環境負荷の低減につながります。
CFRPはとても加工が難しい素材であるため、手作りで作りこまれている部分も多いです。優れた加工技術を持つ日機装のカスケードは、ボーイングやエアバスなど世界中の民間航空機で採用され、世界市場におけるシェアは90%を超えるまでとなっています。2022年には累計出荷数が70万個を超えました。
カスケードは1つのエンジンに十数個ほど搭載されていますが、機種や取り付ける位置によって形状が異なるため種類が多く、当社が現在までに製品化したカスケードの形状は200種類を超えています。
まとめ
巨大でハイスピードな飛行機が着陸し、滑走路で安全に停止するには3つのブレーキシステムがありました。このうち、エンジンの逆噴射を作動させるためには、カスケードが欠かせません。「軽くて強い」けれども加工が難しいCFRPを使った日機装製は、世界中の航空機メーカーから支持を得ています。これからも空の旅の安全を守るために、日機装は高品質なカスケードの製造を続けてまいります。
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