くらしを豊かに
2023/04/17
水素・アンモニアがつくるエネルギーの未来|脱炭素に向けて注目される理由
- 水素
- アンモニア
- 脱炭素
- ポンプ
- インダストリアル事業
目次
気候変動の深刻化を背景に、「脱炭素化」をめざす動きが世界中で加速する昨今。その実現に必要不可欠なエネルギー源として水素・アンモニアが注目を集め、発電や運輸などさまざまな分野で活用に向けた取り組みが進められています。
今回は、そんな水素・アンモニアの特徴や製造方法をふまえた “脱炭素化への貢献” の期待値と、活用の現状と課題を詳しく解説します。
脱炭素の実現に向けて水素・アンモニアが注目される理由
水素とアンモニアは燃焼させても二酸化炭素を排出しないことから、石炭や石油などの化石燃料に代わり脱炭素化を後押しする次世代エネルギーとして着目されるようになりました。
日本政府は2021年発表のエネルギー基本計画において水素・アンモニアを「カーボンニュートラルに必要不可欠な二次エネルギー」として「2030年度の電源構成のうち1%を水素・アンモニア由来とすること」を掲げるとともに、商用化・社会実装に向けた取り組みを推進する方針を示しています。
水素・アンモニアの活用にまつわる現状
これまで、日本政府は「グリーンイノベーション基金(※)」などを通じて企業による研究開発や技術実証への支援を行っており、設備開発・供給コスト低減に向けた技術開発は着実に進められてきました。
現在、水素・アンモニア発電分野や海上輸送技術などの分野では日本は世界をリードしています。今後も蓄積した技術やノウハウを活用しながら脱炭素化に貢献し、成長市場を獲得していくことが期待されています。
※グリーンイノベーション基金:経済産業省によって設置された基金で、カーボンニュートラル実現に向けて野心的な取り組みを進める企業に対して、研究開発・実証〜社会実装までを10年間継続支援するもの
(参照:資源エネルギー庁「水素・アンモニアを取り巻く現状と今後の検討の方向性」2022,3)
水素・アンモニアの特徴と製造方法
ここでは、水素・アンモニアへの注目の背景にある、エネルギー源としての具体的な特徴と製造方法をご紹介します。
カーボンニュートラルに必要不可欠な「水素」
水素は「酸素と反応させて電気エネルギーを取り出すこと」「燃焼させて熱エネルギーとして利用すること」ができ、その過程で二酸化炭素を排出しないことから、化石燃料に代わるエネルギー源として脱炭素化への貢献が期待されています。
また、エネルギー源になるだけでなくアンモニアや合成燃料の製造にも利用でき、幅広い需要に形を変えて対応できること、さまざまな資源から製造が可能で供給を安定させやすいことなどからも、水素は注目を集めています。
水素を製造するにあたっては、 燃焼させてガス化した化石燃料から水素を取り出す「改質法」や、水に電気を流して分解し水素を取り出す「電解法」などの方法が用いられます。
製造方法に応じて水素は主に次の3種に分類されます。その中でも、環境に負荷をかけずに製造される「グリーン水素」が脱炭素化に向けて重要になるとみられています。
- グレー水素:化石燃料を原料とし、製造過程で二酸化炭素を排出するもの
- ブルー水素:製造過程で排出される二酸化炭素を回収〜貯蓄・利用することで、大気中への排出量を抑えたもの
- グリーン水素:再生可能エネルギーから作られ、製造過程で二酸化炭素を排出しないもの
水素キャリアとしても活用できる「アンモニア」
アンモニアも、水素と同様に燃焼させても二酸化炭素を排出しません。そのため、石炭火力発電で燃料にアンモニアを混ぜる「混焼」によって二酸化炭素排出量を抑えること、そして将来的にアンモニア単体で燃料となることが期待されています。
また、水素よりもエネルギー密度が高く活用の幅が広い、エネルギー源になるだけでなく水素を運ぶための媒体(水素キャリア)としても利用できる可能性がある、などの特徴もあります。
アンモニアの製造方法としては、水素と窒素を高温(400〜500度)・高圧(100〜300気圧)の環境下で反応させる「ハーバー・ボッシュ法」が主流です。
またアンモニアも水素と同様に、製造過程での “大気中への二酸化炭素の排出有無” に応じてグレー・ブルー・グリーンの区別がなされます。
水素とアンモニアの商用化に向けた課題
脱炭素社会の実現に向け必要不可欠とされる水素・アンモニアですが、その商用化に向けてはまださまざまな課題が残されています。
技術面での課題
水素とアンモニアの商用化に向け、まずは安定して、かつ地球環境への負荷を抑えて製造〜エネルギー利用を行うための技術開発が求められます。
- 水素・アンモニア製造時の二酸化炭素排出量を抑えるための、二酸化炭素を回収 / 貯留 / 再利用する技術の実証
- アンモニアを含む燃料を燃焼させた際の、窒素酸化物の排出を抑制する技術の開発
- 水素・アンモニアそれぞれの燃焼速度などの特性に応じた、熱量の確保や設備の改良 など
サプライチェーンの構築
技術開発がどれだけ進展しても、「製造→貯蔵→輸送→供給→利用」という一連の流れ(=サプライチェーン)が整備されなければ、エネルギーとして普及、定着させることはできません。
さまざまな領域で水素・アンモニアの需要が生まれ大規模供給が必要になることを見据え、自治体や企業によるインフラの整備のための取り組みが求められます。
- 大規模プラントの建設
- 海上輸送路の整備や、貯蓄用タンクの製造開発・普及
- 燃料電池の普及 など
コストの低減
技術開発やサプライチェーンの構築によって期待されることに、水素・アンモニアの供給コストの低減があります。既存の燃料や機器と、水素・アンモニアとそれにまつわる機器のコストに差があるほど普及は進みづらくなるため、コスト低減は重要な課題の一つだと言えるでしょう。
政府は「エネルギー基本計画」にて、水素については2021年時点で100円/Nm3で販売されているものを【2030年に30円/Nm3以下】に、【2050年に20円/Nm3以下】にまで低減すること。そして長期的には化石燃料と同程度まで低減することを目標として掲げました。
またアンモニアについても、【2030年に10円台後半/Nm3】とすることをめざし、供給体制の構築を進めるとしています。
水素・アンモニアの活用を支える日機装
水素・アンモニアのエネルギー源としての活用を進めるにあたり、欠かせない機器の一つに「ポンプ」があります。
水素やアンモニアは常温では気体ですが、輸送する際には体積を小さくするために冷却して液化されます。このとき水素はマイナス253度、アンモニアはマイナス33度になっているため、輸送に使われるポンプは低温〜極低温下でも安定して稼働できるものでなければなりません。
また毒性や腐食性を持つアンモニアを扱うためには、ポンプ内の重要な部品を腐食から守り、液が外部に漏れ出すことを防ぐ構造が必要になります。
日機装では、こうした特殊な性質を持った液体を扱うポンプの開発を、長年にわたり手がけてきました。 その中で培った、極低温の液体の中でも安定して稼働できる「クライオジェニックポンプ」とポンプとモーターを一体構造にして液の漏えいを防ぐ「ノンシールポンプ」の技術をかけ合わせ、大量のアンモニアを扱える新たなポンプを開発しました。
また、米国子会社CE&IGグループでは、フォークリフトに水素を充填するポンプや水素ステーションで使用されるポンプをはじめとした機器を手掛けており、水素充填ポンプはすでに100台以上の納入実績を持っています。
脱炭素社会の実現に向けた水素・アンモニアの商用化をめざし、今後も日機装ならではの強みを活かした技術開発を進めてまいります。
まとめ
脱炭素社会の実現に向け、発電や運輸をはじめとしたさまざまな分野で水素・アンモニアの活用をめざす取り組みが進められています。
日機装は創業以来培ってきた、高度な技術を活かし、液化した水素やアンモニアといった特殊な液体を取り扱うポンプの開発に取り組んでいます。
水素・アンモニアの商用化に向けて、今後も技術開発に尽力してまいります。
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