いのちの現場
2026/09/24
元サービスエンジニアだからできる「解決への伴走」。サービスダイレクトコールが挑む、ナレッジの蓄積と顧客満足度の最大化
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目次
透析装置の国内シェア約5割を占める日機装。装置の導入後も、全国の医療機関から日々さまざまなお問い合わせが寄せられます。
装置の操作方法や警報発生時の対応など、週に1,000件ほど寄せられるお問い合わせの窓口を担い、医療現場を支えるのが「サービスダイレクトコール(以下、SDC)」です。
元サービスエンジニアが、現場で培った経験を生かして対応するだけでなく、日々寄せられるお客さまの声を開発部門へフィードバックし、製品やサービスの改善にもつなげています。
今回は、SDCの具体的な取り組みについて、メンバーの皆さんに伺いました。
尾形 亮:1999年入社。サービスエンジニアとして21年間従事し、2020年よりSDCに所属。現在はグループリーダーを務める。 西田 雅:医療機器・臨床検査機器メーカーを経て、2015年入社。設計部署を経て、2018年のSDC立ち上げ時から携わる。現在は係長として全体管理を担当する。 小長谷 誠:1990年入社。医療機器製造の工場業務を12年経験した後、サービスエンジニアとして16年間従事。2018年よりSDCに所属。 美濃部 健:1997年入社。愛媛への出向や岡山でのテレワーク業務も経験し、営業兼メンテナンス業務も担当。2021年よりSDCに所属。 新井 駿:2015年入社。仙台営業所でサービスエンジニアとして5年間従事した後、2020年よりSDCに所属。 (※所属・肩書は取材時点のものです) |
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現場経験を生かす、新たなサポート体制の始まり
――まず、SDCの役割を教えてください。
尾形:日機装の透析装置と、透析通信システムをご利用いただいているお客さま向けの、技術的なお問い合わせ窓口を担っています。
一般的なコールセンターと異なるのは、電話を受けるメンバーの多くが、現場でサービスエンジニアとして経験を積んできた装置のプロだということです。“元サービスエンジニアがダイレクトにお客さまの対応を行う”ことから、「サービスダイレクトコール(SDC)」と名付けられました。
――どのような経緯で立ち上がったのでしょうか。
尾形:SDCの立ち上げ以前は、お客さまからのお問い合わせは、各エリアを担当する営業やサービスエンジニアが、休日や夜間を含めて個別に対応していました。個別のご相談に丁寧に対応できる一方で、担当者に負担がかかるうえ、対応方法やノウハウが個人に蓄積されやすいという課題がありました。
そこで、働き方改革の一環として専門のお問い合わせ窓口を作ることになり、2018年にまずは営業所ごとにスモールスタート。その後、2020年に現在の静岡事業所へ機能を集約しました。
尾形さん
――立ち上げ当初、ご苦労などはありましたか。
尾形:最初は手探りで進めていたため、苦労も少なくありませんでした。たとえば、お問い合わせへの対応方法や情報共有の進め方は営業所ごとに異なっていたため、体制を整えるまでには試行錯誤しましたね。
小長谷:そうですね。お客さま側にも戸惑いがあったと思います。それまでは顔なじみのサービスエンジニアに直接質問されていました。
しかし、窓口を集約したことで、お問い合わせは担当者ではなくSDCで受ける体制へと変わりました。そのため、当初は「これまでの担当者ではなくても大丈夫だろうか」と、不安に感じられるお客さまもいらっしゃったと思います。
美濃部:それでも、電話を受けるのは現場経験を持つメンバーであることや、担当者がすぐに電話に出られない場合でも、SDCであれば確実に対応できることを丁寧にお伝えしてきました。そうした積み重ねによって、少しずつ信頼を寄せていただけるようになったと感じています。
(左から)小長谷さん、美濃部さん
元サービスエンジニアだからできる、解決までの伴走
――お問い合わせから解決までの流れを教えてください。

西田:お客さまからお電話いただくと、自動音声で「透析装置」と「透析通信システム」の2つの部門に振り分けられ、それぞれ専門のオペレーターが対応します。オペレーターはまず状況をくわしくヒアリングし、その場で解決できるようサポートします。
電話だけでは解決が難しい、あるいは部品交換や現場での修理が必要と判断した場合は、担当地域のサービスエンジニアへエスカレーションします。修理の手配や日程調整などもSDCで行い、現場での対応が完了するまで状況を確認しています。
(左から)西田さん、新井さん
――最後まで伴走する体制とのことですが、SDCならではの特長を教えてください。
尾形:やはり一番の強みは、SDCのメンバーが現場経験豊富な元サービスエンジニアで構成されていることです。
日機装は、透析装置という患者さんの生命に直結する医療機器を扱っており、納入後のサポート体制にも長年力を入れてきました。以前はメンテナンス業務に特化したグループ会社を有していたこともあり、サービスエンジニアの経験を持つ人材が多く在籍しているんです。
小長谷:そうした経緯もあり、私たちは単なる一次受付ではなく、お電話いただいたその場で解決へ導くことを常に意識して対応しています。電話という声だけの情報伝達であっても、お客さまのお話から状況を把握し、必要な対応を判断して解決へつなげています。
現場に寄り添う、一件一件への対応力
――さまざまなお客さまからお問い合わせが寄せられる中で、心がけていることを教えてください。
美濃部:臨床工学技士や看護スタッフからのご連絡が中心ですが、夜間見回りをされている警備員の方や、ときには院長先生から直接お電話をいただくこともあります。
だからこそ心がけているのは、まずは相手がどの程度装置に詳しいのかを見極め、また声のトーンから切迫感を把握すること。そのうえで、「画面のどこを見ていますか」「何が表示されていますか」と状況を確認しながら、相手に合わせてご案内しています。
新井:私がとくに意識しているのは、お客さまのお話を整理して、「このような状況でお間違いないでしょうか」と内容を復唱して確認することです。
認識にずれがあると、原因の特定や解決までに時間がかかってしまいます。お問い合わせの中には、一刻も早い対応が求められるケースもありますが、丁寧な状況把握が、結果として迅速な解決に繋がると考えています。
――そうした対応が、お客さまの安心感につながっているのですね。
新井:そうだと嬉しいですね。以前、画面の操作方法をご案内した際、お客さまから「こちらの画面が見えているみたいですね」と驚かれたことがありました。電話越しであっても、お客さまの状況に寄り添いながらサポートできたと実感した出来事でした。
美濃部:私が印象に残っているのは、夜間の22時や23時頃にいただいたお問い合わせです。当初は不安なご様子でお話されていましたが、状況を確認し、その場で対応方法をご案内すると、電話を切る頃には「助かりました」と安心した声を聞かせていただきました。
私自身、以前はサービスエンジニアとして現場に立っていたため、装置の前ではどうしても焦ってしまい、対応に苦慮する気持ちはよく分かります。だからこそ、お客さまのお役に立てたと実感できる瞬間に、大きなやりがいを感じています。
状況に応じ、ときには装置に触れながらお問い合わせに対応
――SDCに集まった声が、製品の改良につながった事例もあるそうですね。
尾形:はい。日々寄せられるお問い合わせを分析すると、「この操作でミスが起きやすい」といった傾向が見えてきます。私たちはこれらを月次レポートとしてまとめ、設計や開発、製造部門へ継続的に共有しています。
新井:実際に、私たちが現場で感じた課題を要望として設計部署へ伝えたことで、検証を重ねながら改善が進み、操作性が大幅に向上した新バージョンが市場に投入されたこともあります。結果として、トラブルやお問い合わせが減少し、お客さまとサポートを担う私たちの双方にとって、大きな改善につながりました。
約14,000件のFAQが支える、ナレッジの共有と継承
FAQサイト「SDC Library」(左)とお客さま向け冊子(右)
――お客さまの自己解決をサポートする「SDC Library(ライブラリ)」について教えてください。
尾形:SDCが立ち上がった当初、サービスエンジニアを通じて実施したお客さまへのアンケートで、「かんたんなことを電話で聞くのは気が引ける」とお問い合わせをためらう声があることが分かりました。そこで、電話をかけなくてもWeb上でお客さまご自身で解決できる仕組みとしてスタートしたのが、FAQサイト「SDC Library」です。
当初はマニュアルや装置に表示された情報だけを頼りに、お客さまご自身で解決に取り組んでいただいていましたが、SDCで提供しているサービスエンジニアの現場経験に基づく知見をFAQやナレッジとして、SDC Libraryに掲載することにより、電話でお問い合わせいただくのと同様のサービスをWeb上で提供することが可能となりました。
西田:現在掲載されているFAQの数は、透析装置関連だけで約6,000件あります。全国のお客さまが必要な情報をすぐに活用できるよう、継続的に内容を更新しながらナレッジの共有を進めています。また、お客さまからのアンケートでいただいたコメントの内容もフィードバックしてFAQの更新を行っています。
小長谷:ちなみに、社員用のSDC Library も運用しています。基本的な構成はお客さま向けのものと共通していますが、社員向けには設計変更の経緯や技術情報も掲載しており、サービスエンジニアが修理やお客さまへの説明に活用しています。社員用サイトも含めると、現在SDC Libraryに掲載しているFAQの数は全部で約14,000件にのぼります。
――動画コンテンツでは、どのような内容を届けているのでしょうか。
美濃部:装置の操作画面で、どのような手順で進めるのか、また装置をどのように分解・組み立てるのかといった内容は、文字や写真だけでは十分に伝わりにくい場合があります。そこで、実際の画面や作業の流れを確認しながら直感的に理解していただけるよう、動画コンテンツを制作しています。
また、「このデータを確認すると原因を特定しやすい」「この順番で作業すると効率がよい」といった、現場経験で培った知見を生かし、分かりやすいコンテンツとして提供しています。現在もコンテンツの拡充を続けており、100件以上の動画を公開しています。
――FAQサイトや動画以外に、蓄積した情報はどのように活用されているのでしょうか。
美濃部:FAQに蓄積した内容をもとに、お客さま向けの冊子を年4回発行しています。お問い合わせの多い内容をあらかじめまとめてお届けすることで、お客さまご自身で解決できる機会を増やし、装置をよりスムーズにご使用いただける環境づくりにつなげているんです。
お客さまによっては「Webよりも紙のほうが見やすい」という声をいただくこともあります。また、営業やサービスエンジニアがお客さまへ直接お渡ししているため、情報提供にとどまらず、日頃のお困りごとを伺うコミュニケーションのきっかけにもなっています。
――SDC Libraryを活用することで、どのような成果が生まれましたか。
小長谷:FAQサイトの充実や製品改良が進んだことで、お問い合わせの電話件数はピーク時から約10%減少しました。
また、以前は担当者ごとの経験や知識に依存し、回答内容に差が生じることもありましたが、現在はライブラリに蓄積されたナレッジをもとに、組織として対応できる体制が整っています。お問い合わせに対して最適な回答を共有できるようになったことで、サービス品質の均一化と、特定の人に依存しない持続可能な運営につながっていると感じています。
顧客満足度のさらなる向上を目指して

――今後の課題や展望について、それぞれのお考えを聞かせてください。
新井:今後は、SDCを単なるお問い合わせ窓口ではなく、お客さまを総合的に支援するサービスへと発展させていくことが重要だと考えています。
例えば、今は装置に不具合が発生した後にサポートを行っていますが、装置の状態変化を事前に把握し、適切なメンテナンスをご案内できる仕組みがあればより良いですよね。
小長谷:医療現場では世代交代が進み、コミュニケーションの取り方も少しずつ変化していくと思います。電話という手段だけではなく、FAQをはじめとした資料やコンテンツをさらに充実させ、お客さまが必要な情報に、よりスムーズにたどり着ける環境を整えていきたいと考えています。
美濃部:私は将来的に、スマートフォンなどの便利なツールを上手く活用しながら、お客さまの状況をよりスムーズに把握できるような仕組みが欲しいと思っています。もちろん、個人情報や機密情報の保護といった課題は慎重に考える必要があります。
西田:SDCは、お客さまからのお問い合わせ窓口として始まりましたが、現在では開発・製造部門にいたるまで、さまざまな情報が集まる拠点となっています。そこで得られた知見を社内へ還元し、製品やサービスの改善に生かすことで、最終的にはお客さまや患者さんにより高い満足度を提供できる部門でありたいと考えています。
尾形:SDCでは立ち上げ当初から「顧客満足度の最大化」を理念に掲げ、カスタマーサービス/カスタマーインサイトの実践/顧客要求の的確な実行/アクセス環境の整備という4つの要素を軸に取り組んできました。皆さんが言ったような、新しいツールの活用やデータの分析など、色々な取り組みを行いながら、この4つの要素を循環させ、今後もより多くのお客さまの満足度の最大化を目指します。
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