ものづくり
2024/07/31
【日機装って、どんな会社?】まず知ってほしい技術の強み、まとめました!
- 技術開発
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- メディカル事業
- 航空宇宙事業
目次
「日機装って、どんな会社?」その質問にお答えします!
日機装は、工業、航空、医療分野で、ポンプや航空機部品、医療機器などの専門的な機器を提供するメーカーです。普段の生活のなかで皆さんの目に触れる機会は少ない製品が多いのですが、日本や世界でトップシェアを持つ製品も多くあります。
「実は世界中の産業、医療分野で役立っていることを伝えたい!」
そんな思いを込めて、今回は、まず知ってほしい技術の強みをまとめました。
強み①-162℃のLNGを安定して送るポンプを作れる
環境負荷が比較的低いことから、需要が増加しているLNG(液化天然ガス)。その液温は-162℃。一般的な水とは違って、極めて低温です。ポンプにとって、極低温は大敵。さまざまな悪影響を及ぼします。
しかし、日機装のクライオジェニック(極低温)ポンプは、そんな厳しい性質を持つLNGに浸かりながらも、安定して液を送ることができることが強みです。
【理由】金属特性を熟知し、100分の1mmの精度で設計しているから
クライオジェニックポンプは強度や耐久性を確保して長時間運転を可能とするために、主要部品には異なる種類の金属を組み合わせて使っています。
しかし、金属は冷たい液体にさらされると、収縮する性質を持っています。その収縮率は金属ごとにバラバラです。つまり、LNG用ポンプは、-162℃の環境下で各金属がそれぞれの比率で収縮した時に、しっかり組み合わさって運転できる必要があります。
そのために、100分の1㎜単位の精度でパーツ間に適切な隙間を設けて設計しなくてはいけません。まさに“精密機器”とも言えるクライオジェニックポンプの開発は、金属の熱収縮を熟知していなくては実現できないのです。
それだけではありません。お客さまが求める仕様もさまざまです。「極低温下で安定稼働できるポンプを作る」という難易度の高い前提条件をクリアしたうえで、お客さまのニーズに沿ったオーダーメイドのポンプづくりができることも、日機装の強みとなっています。
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強み②半導体チップの凹凸に追従し、均一に加圧できる
電気自動車(EV)の性能向上に貢献する「SiCパワー半導体」が注目を集めています。このSiCパワー半導体の製造において、強度の向上やコスト削減に寄与するのが日機装の「3Dシンター」です。
3Dシンターは、熱と圧力によって半導体チップと基板を接合する加圧シンタリング装置です。その最大の特徴は、表面の凹凸に追従しながらチップ全体を均一に加圧できることです。
【理由】柔らかいゲル状加圧媒体で、包み込むように加圧するから
銀や銅を素材とする接合材を使って、基板上にチップを接合する「加圧シンタリング」工程では従来、「独立懸架なメタルで加圧シンタリングする方式」が採用されていました。これは、1チップ毎にチップを押す加圧部分が平板な金型になっており、真上からチップを平面的に加圧する方式です。
この方式では、加圧対象形状に応じた高価な金型を製作する必要があります。なおかつ基板やチップの凹凸面全てを加圧することができません。また、性能面ではチップ中央と端で圧力が異なることからシンター材の密度を均一にできないという問題があります。
一方、日機装にて独自開発したのが「3Dシンタリング方式」です。加圧部分に柔らかい特殊なゲル状の加圧媒体(弾性体)を使い、チップを包み込むようにして加圧する仕組みになっています。
そのため、加圧対象の形状ごとに高価な金型を製作する必要が無く、金型交換の手間も削減可能です。また、従来方式では均等に力が掛かりにくかったチップの端もしっかりと加圧でき、チップが剥離するリスクを抑えられます。
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強み③軽くて強いCFRPで、複雑な航空宇宙部品を作れる
「軽くて強い」という特長を持つ「CFRP(炭素繊維強化プラスチック)」の成形加工技術に優れている日機装は、航空機や人工衛星、そしてeVTOL(空飛ぶクルマ)の部品を製造しています。
航空機にCFRP製部品を採用すると、機体の重量が減るので、燃費の向上に貢献できます。また、金属と比較して疲労強度(※繰り返し掛かる力に対する強度)にも優れています。こうした優位点があるため、最新機体であるボーイング787やエアバスA350は、機体の約50%にCFRPが使われています。
【理由】オートクレーブ成形法で40年、豊富な設計製造経験があるから
日機装は、オートクレーブ成形という方法でCFRPを成形加工しています。樹脂を含んだ布状のCFRP素材(プリプレグ)を金型に積み重ねて形をつくり、オートクレーブ(圧力釜)で加熱・加圧して硬くする方法です。プリプレグの積層には高い技術力が必要ですが、この方法であれば、複雑な構造であっても一度で成形品を作ることができます。
シンプルなパーツに細分化して、後からボルトでつなぎ留めるやり方では、ボルトの分だけ重量が増えてしまうので、航空宇宙製品には向きません。
オートクレーブは設備コストが高いので、量産できるだけの設備を持っているメーカーは限られます。また、人々の命を預かる航空機部品を提供するにあたり、日機装は独自の解析・試験評価手法をもとに高度な品質検査を実施しています。 これも、他社にない強みです。
CFRPは便利な素材ではありますが、弱点もあります。例えば、プリプレグを積み重ねた板構造になっているので、プリプレグ一枚一枚の間には繊維が入っておらず、その部分は樹脂と同等の強度になってしまうことなどが挙げられます。こうした素材の特性を熟知し、弱点を補うための設計ノウハウを有していることも、日機装の強みと言えるでしょう。
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強み④血液透析を行う医療機関の課題解決に貢献できる
血液透析は、命と健康を支える重要な治療です。多くの患者さまは2日に1回、1回4時間の治療を必要としており、一つの施設で30人〜40人が一斉に治療を受けることもあります。近年は少子高齢化や人口減少によって、医療従事者の不足が進行しています。そのため医療機器メーカーには、少ない人的資源下でも高いパフォーマンスを発揮する機器の開発が、求められています。
日機装では、医療機関が抱えるこれらの課題を解決し、患者さまへ安定的に医療を継続するためのソリューションを提供しています。
【理由】医療従事者の負担を減らす技術革新をしているから
血液透析を行うためには、さまざまな準備工程があります。血液を体外循環するための体外循環回路や血液浄化器を透析液で満たしたり、洗浄したり、身体へ接続したり……と、複雑なプロセスも多く、慣れるまでに時間がかかります。
臨床工学技士や看護師の方は、大学や専門学校で基本的な操作方法を学んだうえで、入職後も一定期間トレーニングをする専門性の高い作業です。こうした透析装置の操作に対するハードルを下げるために、チューブ(透析用血液回路)のシンプル化、操作アシスト機能の搭載など、操作者の負担軽減を図っています。
最近では、透析装置のモニタリング機能も強化しています。日機装のモニタリングシステムは、治療の安全性を確認し、トラブルを未然に防ぐことを目的としています。
例えば、一般的に透析治療の効果は定期的な血液検査によって評価されるため、1回の治療ごとに治療効果の情報を得ることはできません。しかし、モニタリングシステムを使えば、治療効果の指標をリアルタイムで確認できるため、治療条件の迅速な調整が可能です。
また、血液透析では、体外循環を安定的に行うことが重要です。透析治療中に穿刺(せんし)部の血管状態が悪化して体外循環が安定しないと、治療効率が落ちて安定的な治療が継続できなくなることもあります。そのような変化をモニタリング機能により簡便かつ早期に検出することで、患者さまに合わせた至適な治療が可能となり、ケアを行う医療従事者の業務負担軽減にもつながります。
ワンモアチョイス!
強み⑤事業の垣根を超えて、研究・技術開発ができる
お客さまの日機装に対するニーズは多様化・高度化しています。日機装が今後もそのニーズに対応し、社会課題の解決に貢献しながら持続的に発展していくためには、既存の改良、改変レベルの開発から脱却する必要があります。
日機装には「インダストリアル」「航空宇宙」「メディカル」の3事業がありますが、これまでは独立独歩で技術的な交流はあまりありませんでした。
しかし、持続的な発展を実現するには、事業の垣根を越えて、新しい基幹技術や要素技術の開発を行うことが不可欠です。こうした社会的な要請を捉え、日機装は現在、事業の垣根を超えた交流を活発に行っています。これが新たな強みとなりつつあります。
【理由】研究開発拠点を集約、日機装技術研究所を設立したから
その舞台となっているのが、日機装技術研究所(東京都東村山市)です。約400人の技術者が集まり、製品の研究/改良開発や製品設計、品質保証などに取り組んでいます。
技術者も、研究設備も、一つの拠点に集まっています。5分ほど歩けば、自分たちの技術を他の技術部で試してもらったり、相手の技術を経験させてもらえたり。そんなことが可能です。知恵や技術を交換し合う取り組みは、自然に、そして着実に増えて効果を発揮していくはずです。
ある技術部の持つノウハウを展開することで新しいものを生み出す、ある技術部単独では思いつかなかったような技術開発に向けて一歩踏み出せる……そんな可能性やアイデアは、すでに多数生まれています。
まだ道半ばではありますが、今後さらにシナジーが生まれていくはずです。
ワンモアチョイス!
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